Society 5.0に向けた学校・教育

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AIと人材育成

2018年6月5日に文部科学省から、「Society 5.0に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」という本文が約20ページの報告書が発表されました。

これは文部科学大臣のもと、Society 5.0における人材像、学校や学びの在り方、今後の教育政策の方向性等について議論を重ねてきた「Society 5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会」と課長級職員を中心に、人生100年時代そしてSociety 5.0という新たな時代において豊かに生き、活躍する人材を育てるためには、学校はどうあるべきか、教育はどうあるべきかなど議論してきた「新たな時代を豊かに生きる力の育成に関する省内タスクフォース」の報告書として出されたものです。

Society 5.0 に向けた日本社会の課題と求められる人材

報告書の「第1章 Society 5.0 の社会像と求められる人材像、学びの在り方」の中で、Society 5.0 に向けた日本社会の現状について、AIや数学・情報科学等に関する研究開発と教育が、米国や中国などより立ち遅れていること、AI人材が不足していること、情報科学のトレーニングを受けている学生が少ないこと、いわゆるFAGAなどのプラットフォーム・ビジネスにおいて極めて不利な立場にあり、データ、技術、人材のすべてにおい桁違いに力の差があること、などをしてきしています。

こうした課題を踏まえたうえで、Society 5.0 を牽引する人材として、大きく「技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見・創造する人材」と、「それらの成果と社会課題をつなげ、プラットフォームをはじめとした新たなビジネスを創造する人材」を挙げています。

このプラットフォームを創造できる人材には、「アントレプレナーシップ」「真理や美の追究を指向するサイエンス、アート的発想」といった資質・能力に加えてリーダーシップや他者への思いやりや多様性の重視など倫理観、価値観が重要であるとしています。

Society 5.0 における学校の変化

AI やビッグデータ等の先端技術によって、学びの質が加速度的に充実した時代が到来するとして、Society 5.0 における学校の変化を次のように見ています。

① 一斉一律の授業スタイルの限界から抜け出し、読解力等の基盤的学力を確実に習得させつつ、個人の進度や能力、関心に応じた学びの場となることが可能となる。

② 同一学年での学習に加えて、学習履歴や学習到達度、学習課題に応じた異年齢・異学年集団での協働学習も広げていくことができる。

③ 学校の教室での学習のみならず、大学(アドバンスト・プレイスメントなど)、研究機関、企業、NPO、教育文化スポーツ施設、農山村の豊かな自然環境などの地域の様々な教育資源や社会関係資本を活用して、いつでも、どこでも学ぶことができるようになる。

(Society 5.0 に向けた人材育成~ 社会が変わる、学びが変わる ~平成30 年6 月5 日 Society 5.0 に向けた人材育成に係る大臣懇談会、新たな時代を豊かに生きる力の育成に関する省内タスクフォース より)

そして、今後実施すべき短期的・中期的施策をSociety 5.0に向けたリーディング・プロジェクトとして、「公正に個別最適化された学びの実現」「基盤的な学力や情報活用能力の習得」「大学等における文理分断からの脱却」の3つの方向性を掲げています。

「公正に個別最適化された学びの実現」では、EdTechとビッグデータの活用、スタディ・ログの電子化・蓄積、CBT(Computer Based Testing:コンピュータを利用して試験を行うシステム)の導入、データの収集、共有、活用のためのプラットフォームの構築などが挙げられています。

「基盤的な学力や情報活用能力の習得」では、小中高を通じてのデータ・サイエンスや統計教育の充実が挙げられています。

「大学等における文理分断からの脱却」では、高校生が高度かつ多様な科目内容を学ぶことができる「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム」の創設などが挙げられています。

「未来の教室」とEdTech

同じころ(2018年6月)、経済産業省の「未来の教室」とEdTech研究会から。「50センチ革命×越境×試行錯誤」「STEAM(S)×個別最適化」「学びの生産性」というキーワードが書かれた第1次報告がだされました。

この研究会は、世界的な人材開発競争の中で日本の教育現場も産業・地方創生の未来を切り拓くチェンジ・メイカーを育てる場へと進化していく必要があるとの問題意識から2018年1月に設置されたものです。

報告書では第1章で日本の社会や教育の課題を整理し、第2章では未来の教室のラフ・スケッチを示しています。第3章では、EdTechを活用し、「学習者中心」の学びの社会システムが形成される上で、「未来の教室」実証事業等を通じて、さらに検討すべきことのあるポイントが整理されています。

報告書はEdTechやSTEM教育について多くのことが述べられていますが、文科省の報告書と比べると、EdTechやSTEAM(Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics)教育の重視はもちろん、文理の融合、「教師だけ」が指導に携わるという概念からの脱却、教師の役割の変化、学習の個別化など、共通する点が多く見受けられます。

違う点としては経済産業省の報告書には「学びの生産性」という言葉が繰り返しでてきますが、文科省の報告書には全く出てこないことが挙げられます。報告書の10ページには、EdTechの活用で「学びの生産性」が上がり、子どもは午前中に勉強を終わらせて、午後は全て探究に費やす環境を作ることができたら理想的とあるように、基礎的学習は効率よく終わらせて、非連続的な破壊的イノベーションが求められる第4次産業革命の時代のチェンジ・メーカーに必要な資質能力を育てようというという考えがあるのかもしれません。

 

参考文献

・Society 5.0 に向けた人材育成~ 社会が変わる、学びが変わる ~平成30 年6 月5 日 Society 5.0 に向けた人材育成に係る大臣懇談会、新たな時代を豊かに生きる力の育成に関する省内タスクフォース http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/06/1405844_002.pdf

・経済産業省「未来の教室」とEdTech研究会第1次提言「50センチ革命×越境×試行錯誤」「STEAM(S)×個別最適化」「学びの生産性」2018年6月 http://www.meti.go.jp/press/2018/06/20180625003/20180625003-1.pdf

・「未来の教室」に向けた、思いとアイデア「未来の教室」とEdTech研究会 付属ワークショップ(全5回) で集められた教育関係者と中高生・大学生の声 2018年6月 商務・サービスグループ 教育産業室 http://www.meti.go.jp/press/2018/06/20180625003/20180625003-3.pdf

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