Fab(ファブ)

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Fab(ファブ)

最近「ファブラボ」とか「ファブ社会」という言葉を耳にする機会が増えてきました。経済産業省の「情報通信白書平成25年度版」にはすでに「ファブラボ」に関する記述がありますし、同省の情報通信政策研究所からは2014年6月に「ファブ社会の展望に関する検討会報告書」、2015年7月には「ファブ社会の基盤設計に関する検討会」の報告書「ファブ社会推進戦略 ~ Digital Society 3.0 ~」が公表されています。

ファブ(Fab)とは、英語の「Fabrication=作ること」と、「Fabulous=素晴らしい」の二つの意味が含まれる造語です。経済産業省の「ファブ社会推進宣言(Fab Society Declaration)」によれば、「ファブ社会」とは、「インターネットとデジタルファブリケーションの結合によって生まれる新たなものづくりと、デジタルデータの形をとったものの企画・設計・生産・流通・販売・使用・再利用が前景化する社会である」と定義づけしています。

また、ファブラボについては、「情報通信白書平成25年度版」で、ファブラボ(Fab Lab)とは、「デジタル・ファブリケーション(パソコン制御のデジタル工作機械)を揃え、市民が発明を起こすことを目的とした地域工房の名称である」としています。

ファブラボ

ファブラボは意外に古くからある概念で、最初に提唱したのはMITのビット・アンド・アトムズ・センター所長のニール・ガーシェンフェルド氏と言われています。FabLab Overview(ファブラボ概説 日本語版)によれば、2001年にアメリカ国立科学財団によってMIT内に設立された「center for bits and atoms(通称CBA)」とあります。経済産業省の「情報通信白書平成25年度」では、ニール・ガーシェンフェルド氏が1998年にボストンとインドに設置したのが最初で、その後同氏の著書をきっかけに世界各地に「ファブラボ」が設立されるようになった」と述べています。日本国内では、2010年に「Fab Lab Japan」が設立され、2011年に、日本初のファブラボが鎌倉と筑波に誕生しました。なお、Fab Lab Japanは2013年に「FabLab Japan Network」と名称を変更しています。現在、全国に15のファブラボが運営されているようです。

ところで、ファブラボは誰でも簡単に設立を宣言できるわけではありません。いくつかの条件があります。まずは「ファブラボ憲章」に従っていることが必要です。また、備えなければならない工作機器として、レーザーカッター、CNCミリングマシン、CNCルーター、ペーパーカッター、電子工作機材一式、ビデオ会議システムなど、推奨機材としてはミシン、3次元プリンターなどを指定しています。ファブラボは単独で活動するのではなく、知識を共有しグローバルなコミュニティとして活動することが前提であり、そのためビデオ会議システムなどで国際規模のFabLabネットワークに参加することも義務付けられています。

地域別世界のファブラボ fab_003_R

(http://www.fabfoundation.org/fab-labs より)

ファブラボ政策

アメリカでは、すでに2013年に「全国ファブラボ・ネットワーク法」(National Fab Lab Network Act of 2013)を超党派で提案しています。ファブラボ・ネットワークでは、人口70万人に一つのファブラボを作ることを目標としています。いわば、ファブラボを「図書館」のように身近で気軽に利用できる存在にすることが国の施策になっているわけです。

また、スペインのバルセロナでは、ファブラボの運営者を市のシティ・アーキテクトに任命し、市内に5~6箇所のタイプの異なるファブラボを設置することにしたり、ロシアでは、モスクワ市内に20箇所、ロシア全域では100箇所にファブラボの設置を計画したり、国や市が積極的にファブラボの普及・推進に関わっているようです。

ファブ社会

「ファブ社会の展望に関する検討会」の報告書では、デジタルファブリケーションの発展によって、デジタルともリアルとも全く異なるものづくり空間(フィジタル空間)が出現しているとしています。

フィジタル空間の誕生 fab_001

(「ファブ社会」の展望に関する検討会報告書:平成26年6月 総務省情報通信政策研究所より)

フィジタル空間」では、「もの」と「情報」が相互に行き来可能になり、ものと情報は一体不可分なものとなります。また、情報、通信、製造の全てがデジタルで繋がり、「ICF社会」が実現するとしています。ICFとはInformation(情報)、Communication(通信)、Fabrication(製造)です。その上で、3Dプリンタ等のデジタルファブリケーション機器の発展、企業や個人を問わずデジタルファブリケーション機器の活用が進むにつれ、「いつでも、どこでも、誰でも」必要なものを必要な量だけつくることができる社会出現の動きがみられるようになってきたと分析しています。こうした社会を「ファブ社会」と呼んでいます。

ファブ社会では、ものの生産と消費の概念が大きく変わり、生産者と消費者の両方の顔を持つ「創造的生活者」が登場し、また、ものづくりのバリューチェインにおけるコスト構造が変化し、新素材、新領域デザインとデザイン・エンジニアリングが重要な社会になるとしています。こうした変化は当然ながら製造業を中心とした産業構造の変化を生むでしょうし、ひいては人の働き方や暮らしなど、生活に大きな変化をもたらすかもしれません。

ファブ社会と創造的生活者 fab_002_R

(「ファブ社会の基盤設計に関する検討会報告書 ファブ社会推進戦略~ Digital Society 3.0 ~」より)

産業構造の変化については、次のように示しています。

製造・・・個人・コミュニティと企業が並列でつながるものづくりに

物流・・・製品物流から資材物流が中心に

販売・・・ものではなく、データが販売の中心となる。個人・コミュニティと企業の製品が混在する

決済・・・データを用いた物々交換、個人ベースでの決済が拡大

製品・・・パーソナルニーズに応える製品、余白のある製品

(「ファブ社会」の展望に関する検討会報告書:平成26年6月 総務省情報通信政策研究所より)

「ファブ社会の基盤設計に関する検討会報告書 ファブ社会推進戦略 ~ Digital Society 3.0 ~」では、デジタルファブリケーション技術とマーケット構造に大きな変革の流れは止めることはできず、 ファブ社会への移行は必然として、新しいものづくりが推進され、本格的なファブ社会を迎えるための有益な方策を情報基盤、制度基盤、人的基盤の観点から提言しています。

情報基盤としては、「ものに関するあらゆるデータを標準化し、1つのデータフォーマットにパッケージ化」「素材に関するデータベースの構築」「ファブコラボレーション基盤の整備」などを挙げています。制度基盤としては、知的財産に関して「権利者の権利を適切に保護しつつ、3Dデータ等の利用・流通を促進させ、n次創作・多次創作を活性化させること」「著作権に関する一般規定としてのフェアユース規定の導入」などを挙げています。また、ものづくりに参画する者の意欲を減退させず、ものづくりを活性化させる枠組みとして、「製造物に関する責任の所在や品質保証」、人的基盤としては、「3Dプリンタ等の機器の配備、ネットワーク接続等のハード面と優れたカリキュラムの開発と共有、人的な交流などのソフト面の整備」「学校教育において新しいものづくりの素養を育む」などを挙げています。

 

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