2030年の産業構造・就業構造(新産業構造ビジョン中間整理より)

Hardware icons

新産業構造ビジョン~中間整理~

経済産業省産業構造審議会の「新産業構造部会」は2016年4月27日に「新産業構造ビジョン~中間整理~」を公表しました。昨年8月より議論を重ねてきており、6月に政府が改訂する「日本再興戦略」の骨格となるものです。
内容は以下の構成からなり、54ページになります。

1 新たな成長エンジンを求めるグローバル経済
2 今、何が起こっているのか~第4次産業革命のインパクト~
3 第4次産業革命による新たな成長と産業構造・就業構造の変革
(1) 新たな成長フロンティアとしての有望分野
(2) 産業構造・就業構造変革の方向性

(ⅰ)ニーズ駆動による産業構造転換のポイント
(ⅱ)就業構造転換のポイント
(ⅲ)具体的な変革の「将来像」
(ⅳ)産業構造・就業構造の試算

4 第4次産業革命をリードする我が国の基本戦略
(1)我が国の現状
(2)第4次産業革命の2つのシナリオ~日本は今、「分かれ目」
(3)戦略領域における基本的アプローチ
5 未来に向けた経済社会システムの再設計 ~ 7つの対応方針 ~
6 我が国の具体的戦略
(1)データ利活⽤促進に向けた環境整備
(2)⼈材育成・獲得、雇⽤システムの柔軟性向上
(3)イノベーション・技術開発の加速化(「Society5.0」)
(4)ファイナンス機能の強化
(5)産業構造・就業構造転換の円滑化
(6)第4次産業革命の中小企業、地域経済への波及
(7)第4次産業⾰命に向けた経済社会システムの⾼度化

この中間整理の内容を新聞各社も取り上げていましたが、その論調は「3 第4次産業革命による新たな成長と産業構造・就業構造の変革」の「(2)産業構造・就業構造変革の方向性 (ⅳ)産業構造・就業構造の試算」について述べているものが多いようです。

日本経済新聞は「AI・ロボット活用しないと30年の雇用735万人減 経産省試算」との見出しで、朝日新聞も同じように「AI・ロボで雇用735万人減 「第4次産業革命」試算」との見出しで、雇用に着目した見出しを付けていました。
毎日新聞は「GDP846兆円に 技術革新成功で」という見出しで、SankeiBizは「次世代技術、222兆円効果 30年度GDP増加分 雇用創出574万人」との見出しで、経済効果に着目した見出しを付けていました。

産業構造・就業構造の試算

試算は「現状放置シナリオ」と「変革シナリオ」の2つのケースについて行っています。
現状放置シナリオでは、「我が国産業が海外のプラットフォーマーの下請けに陥ることにより、付加価値が海外に流出」「社会課題を解決する新たなサービス付加価値を生み出せず、国内産業が低付加価値・低成長部門化」「機械・ソフトウェアと競争する、低付加価値・低成長の職業へ労働力が集中し、低賃金の人が多い社会」としています。変革シナリオは「社会課題を解決する新たなサービスを提供し、グローバルに高付加価値・高成長部門を獲得。」「技術革新を活かしたサービスの発展による生産性の向上と労働参加率の増加により労働力人口減少を克服」「機械・ソフトウェアと共存し、人にしかできない職業に労働力が移動する中で、人々が広く高所得を享受する社会」としています。

vision_001_R

(「新産業構造ビジョン」 ~第4次産業革命をリードする日本の戦略~ 産業構造審議会 中間整理 平成28年4月27日 経済産業省より)

試算では、2030年度のGDP成長率は実質で現状放置シナリオが+0.8%なのに対して変革シナリオでは+2.0%、名目は、現状放置シナリオで1.4%、変革シナリオでは3.5%としています。賃金上昇率は現状放置シナリオが+2.2%なのに対して変革シナリオでは+3.7%としています。金額では、現状放置シナリオの名目GDPが2020年度が547兆円、2030年度が624兆円なのに対して、変革シナリオでは2020年度が592兆円、2030年度は846兆円となっています。

産業構造の試算

また、産業構造を「粗原料部門」「プロセス型製造部門(中間財等)」「顧客対応型製造部門」「役務・技術提携型サービス部門」「情報サービス部門」「おもてなし型サービス部門」「インフラネットワーク部門」「その他(医療・介護・政府・教育)」の8つに分けて、それぞれのGDP成長率、従業者数、労働生産性について試算を行っています。それによれば、従業者数は現状放置シナリオでは2015年度に比べて735万人の減なのに対して変革シナリオでは161万人の減にとどまっています。「情報サービス部門」、「おもてなし型サービス部門」ではむしろ2015年度より増えており、それぞれ72万人、24万人の増となっています。

就業構造の試算

さらに就業構造を「上流工程(経営戦略策定担当、研究開発等)」「製造・調達」「営業販売(低代替確率)(カスタマイズされた高額な保険商品営業担当など)」「営業販売(高代替確率)(スーパーのレジなど)」「サービス(低代替確確率)(高級レストランの接客、きめ細かな介護など)」「サービス(高代替確率)(コールセンター等)」「IT業務」「バックオフィス」「その他」の9つに分けて従業者数及び年率の試算を行っています。それによれば、現状放置シナリオでは「サービス(高代替確率)」が雇用の受け皿となって微増するほかはすべてにおいて減少しています。特に「製造・調達」が262万人、「バックオフィス」が145万人、「上流工程」が136万人と大幅な減少となっています。それに対して変革シナリオでは、「製造・調達」が297万人、「バックオフィス」が143万人の減少で現状放置シナリオとあまり変わりませんが、「上流工程」が弱に96万人の増となっています。他にも「営業販売(低代替確率)」「サービス(低代替確率)」「IT業務」がプラスとなっています。

分かれ目に立つ日本

今回公表された「中間整理」では」、日本は今「分かれ目」に立っているとして、次のように述べています。

・現状放置のまま安定したジリ貧を取るのか、変革シナリオを取り、痛みを伴う転換を取るのか、我が国は極めて重要な決断が求められている。
・従来の漸進的かつ連続的なイノベーションを前提とする安定を重視した「剛構造」の産業構造・就業構造ではなく、破壊的なイノベーションを前提とする多様なチャレンジが生み出され新陳代謝が活発に行われるような「柔構造」の産業構造・就業構造を構築することが必要。
・第4次産業革命の極めて早い変革スピードを目の前にすると、日本に残された時間はもはや少ない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です