シンギュラリティ(Technological Singularity)

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2045年その時何が?

シンギュラリティ(Singularity)とは日本語では特異点と言います。私たちが耳にするのはあらゆる物理量が無限大になってしまう宇宙物理学での重力の特異点 (gravitational singularity)ではないでしょうか。ここでの特異点、コンピュータが発達して、その知能が人類の知能を凌駕する時点のことを指しています。ですので、単に特異点(Singularity)と言わずに、技術的特異点(Technological Singularity)ということもあります。

米国の数学者でSF作家でもあるヴァーナー・ヴィンジ(Vernor Vinge)氏が、1993年に発表した論文「The Coming Technological Singularity」で技術の指数関数的発達について述べ、「機械がいずれ人間を上回る知能ばかりか、意識までも持つようになる」とする予想したあたりからはっきりと使われ出したことばのようです。それ以前でも作品の中で、特異点で発生する出来事を描いたりはしていました。

米国の著名な発明家で、現在はグーグルで人工知能の研究に携わっているレイ・カーツワイル氏は2045年頃にそれが起きると予想し、2045年以降は、人工知能の能力が上回ってしまうので、人工知能が新しく考え出した知見について、人間が理解できなくなると述べています。

それは、コンピュータ技術が今のスピードペースで発達し続けるとある地点で地球全人類の知能を超える究極のコンピューター(人工知能「A・I」)が誕生します。その人工知能はさらに自分より優秀な人工知能を作ります。その人工知能はさらに優秀な・・・。という具合にどんどん進化し、人間の脳では理解不能の未来が訪れるというわけです。人類の知恵を超える究極のコンピュータは、人類最後の発明となるかもしれません。その時点をシンギュラリティ(Technological Singularity)と言い、そうなっときに起きるであろうあらゆる問題を「2045年問題」と称しています。まるでSFの世界のような話ですが、すでにそうした未来を見据えた議論が始まっているのです。

政府もシンギュラリティを真剣に考えている?

総務省は「インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する研究会」を発足させました。すでに4回の会合が開かれており、第1回の会合は平成27年2月6日に開催されました。この研究会の発足に当たって会の目的を次のように述べています。

ICT のインテリジェント化が止まるところを知らない。2045 年にはコンピュータの能力が人間を超え、技術開発と進化の主役が人間からコンピュータに移る特異点(シンギュラリティ)に達するとも議論されるなど、その処理能力は加速度的に高まっている。・・・・・ビッグデータ、人工知能、ロボット等を通じて、既に私たちはこれら技術の恩恵を受け始めている。しかしこれらは始まりであって、十年後、二十年後には、今の私たちにはSF とも思われる世界が広がっている可能性がある。

〇 この技術進歩は、社会をどのように変えていくのか。新たな世界において、コンピュータ・機械と人間の関係はどのように変化していくのか。私たちが新たな技術を使いこなすためには、何を考えておく必要があるのか。

〇 この技術進歩の中で主要プレーヤーの立場を確保しようとする動きが、諸外国において官民を問わず進んでいる中にあって、ICT 分野において世界をリードしてきた我が国が、この変化に正面から向き合い、更なる高みを求めていくためには何が必要か。

・・・・・

こうした目的に沿って第1回の会合では最初に「人工知能の現在と未来」と題した発表があり、シンギュラリティ(Technological Singularity)について真剣に議論されたようです。

「シンギュラリティが本当に起こりえるかということを議論しなければいけない。また、遺伝子は情報学と非常に関係が深いので、遺伝子関連分野への投資も必要・・・・」

「・・・・シンギュラリティの議論で最も重要な点として、コンピュータの知能のレベルがどこまで上がるかという話と、それが本能を持って生命としての欲望を持つかということは、分けて議論しなければならない」

といった意見が議事録の中に書かれています。

 

「機械が人間より知能的に優れている」という状態は、人間と機械の位置が逆転することを意味します。人間は「賢い」機械に使われる「道具」になるかもしれません。ひとたび機械が人間を越えたとき、その先にあるのは一体どんな世界なのかと考えると、社会へのインパクトはあまり大きく、今からそのことに備える準備をしなければならないのかもしれません。

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(第1回「インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する研究会」会合資料 東京大学・松尾豊氏より)

チューリング・テスト

2045年ごろに技術的特異点が起きると予測する前述のレイ・カーツワイル氏は、2029 年ころにコンピュータがチューリング・テストをパスして、人工知能が意識を持つと予想しています。それは、集積回路が1~2年で倍になるというムーアの法則を拡張させた「収穫逓増の法則」(The Law of Accelerating Returns)を根拠としています。収穫逓増の法則とは、一つの重要な発明が起きると新たな重要な発明が起きるまでの時間間隔は、出来事が起きるたびに短くなっていくというものです。つまり、イノベーションの速度を加速させるという考えです。

さて、レイ・カーツワイル氏が予言したチューリング・テストとはどんなものなのでしょうか。チューリング・テストとは、イギリスの数学者で「コンピュータの父」とも呼ばれるアラン・チューリングが提唱したもので、彼の名前をとってその名称がつけられています。チューリングは、「機械は思考できるか?」という問題意識から、人工知能を知的と呼べるかを判断するためのテストを考案しました。そのテストで人間の審判員の30%が、相手が人間か人工知能か判断できなければ合格というものです。

ところで、昨年の「Turing Test 2014」で、ウクライナ在住の13歳の少年、ユージーン・グーツマンくんという設定のスパコン上で動作する会話プログラム「Eugene Goostman」が、審判員の33%を欺くことに成功しました。あまりにも早い達成に、テストの手法に疑問を投げかける科学者もいますし、当の開発者自身も「アラン・チューリングが本来意図したチューリング・テストであったかどうかは正直、私には分からない」と言っています。さらには、「チューリング・テストに合格したからといってコンピュータが会話の意味を理解しているのではなく、ルール通りに回答しているだけ」という批判もあります。

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(ITmedia ニュース http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1406/09/news049.html より)

合格と言えるかは別としても、人工知能がさらに進化したことの証であることには違いないようにも思います。「ニューラル・ネットワーク(人工知能)」は、さらなる指数関数的進歩を遂げていく予感がします。

技術的失業

「技術的失業」(テクノロジー失業)という言葉があります。新しい技術の導入によってある種の仕事がなくなることによる失業です。これまでの経済史の中でそうした失業が2度あったとされています。最初は産業革命です。これによって織物工が失業しました。その頃、失業を恐れた労働者による機械の打ちこわし(ラッダイト運動)が起きました。2度目は工業用ロボットの普及による工場労働者の失業です。ですが長い歴史的スパンでとらえれば、大方は新しい技術革新は新しい仕事を生み出し、労働力を吸収してきました。

しかし、最近になって、2013年に『機械との競争』という翻訳書が出版されるなど、技術的失業の脅威が再び話題に上るようになってきました。人工知能・ロボットの進化によってこれから第3の技術的失業が始まるというのです。

確かに、グーグルの開発しているような自動運転車によって、トラック運転手やタクシー運転手がいらなくなるかもしれません。もっとも影響をうけるのはオフィスワーカーだと言われています。2030年ごろまでに今ある仕事の半分はなくなるいう予測も出されています。そして、人間にのこる仕事は学者、芸術家、アスリートだけだという指摘があります。いわゆる創造的な仕事です。しかし、芸術家だって劇場以外の業務音楽では音楽家は必要ないかもしれません。人間かアニメか区別がつかなくなれば俳優も必要ないかもしれません。医師、弁護士、教師も必要なくなるかもしれません。すでに「Watson」がその代替をし始めています。これに対して心配ないという立場もあります。これまでも新しい技術は一方で新しく多くの職が生み出してきたというわけです。

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(http://synodos.jp/wp/wp-content/uploads/2014/11/ab02ddb06609885c21b93c07a4fe51e0.jpgより)

ですが、新しい仕事が生まれたとして、その技術を労働者が習得できるほどの余地が高度に進化した社会の中に残されているでしょうか。唯一人間に残されると期待する創造的な労働ですら、シンギュラリティ後は徐々に減少していくはずです。労働力の需要が起きないのです。さらに、人工知能・ロボットの進化による生産性の向上によって得られる富は、少数の富めるものさらに独占を加速させることになり、格差が拡大するということも懸念されます。

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