TPPとIT機器

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工業製品輸出品目86%即時撤廃

TPP(環太平洋連携協定)の大筋合意がなされ、先日、全体内容が公表されました。工業製品に関しては、11か国全体で86.9%の品目が協定の発効後すぐに関税がなくなります。日本にとって大きな輸出先であるアメリカの状況が気になるところですが、対米輸出関税では、大半の工作機械、切削工具、プレス金型が即時撤廃、排気量1000―2000ccのエンジンは即時撤廃、同2000cc超は5年目撤廃、クランクシャフトやブレーキ、ギアボックスなどは即時撤廃、車体やステアリングは6―7年目に撤廃、産業用ロボット(2・5%)は5年目の関税撤廃となるが、部品(2・8%)は即時撤廃、産業用ロボットは5年後に撤廃となり、産業機械の輸出拡大への期待が高まっているようです。

また、日本では、海外から輸入する工業製品の大半の品目についてすでに関税を撤廃していますが、今回のTPPの大筋合意で、工業製品は100%すべての品目で関税がなくなることになります。

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(http://www.jftc.or.jp/kids/kids_news/japan/kyotei04.html より)

経済産業省TPP対策推進本部の資料には、「本協定により、工業製品については、我が国から参加11か国への輸出額(約19兆円)の99.9%についての関税が撤廃される。(うち、即時撤廃の割合は76.6%)」とされています。 具体的には次のようになっています。

≪米国≫

□ 工業製品の輸出額(約10兆円)の100%の関税撤廃を実現。

□ 自動車部品(現行税率主に2.5%)については、8割以上の即時撤廃で合意。米韓FTAを上回る水準。

<即時撤廃率>

日米(TPP) - 品目数:87.4%、輸出額:81.3%

米韓FTA - 品目数:83.0%、輸出額:77.5%

□ 乗用車(現行税率2.5%)については、15年目から削減開始、20年目で半減、22年目で0.5%まで削減、25年目で撤廃。(TPP全体における、最長の関税撤廃期間は30年目)

□ 家電、産業用機械、化学では、輸出額の99%以上の即時撤廃を実現。 (例)家電:ビデオカメラ(現行税率:2.1%)を即時撤廃。 化学:プラスチック製品(現行税率2.1%~6.5%)を即時撤廃。

□ 繊維・陶磁器等、地方中小企業に関連する品目についても関税撤廃を実現。 (例)陶磁器:対米輸出額の75%を即時撤廃。 今治タオル:米国の現行税率9.1%を5年目に撤廃。

≪カナダ≫

□ 工業製品の輸出額(約1兆円)の100%の関税撤廃を実現。

□ 乗用車(現行税率6.1%)については、5年目撤廃を実現。カナダ・EUFTAの8年目撤廃を上回る水準。

□ 自動車部品(現行税率:主に6.0%)については、日本からの輸出の9割弱が即時撤廃。

<即時撤廃率>

日加(TPP) -品目数:95.4%、貿易額:87.5%

加韓FTA - 品目数:72.2%、貿易額:59.1%

□ 化学、家電、産業用機械では輸出額の99%以上の即時撤廃を実現。

≪ニュージーランド≫

□ 工業製品の輸出額の98%以上が即時撤廃。残りも7年目までには完全無税化。

≪豪州≫

□ 工業製品の輸出額の94.2%が即時撤廃。日豪EPA(82.6%)を上回る水準。

□ 輸出の約5割を占める、乗用車、バス、トラック(現行税率5.0%)の新車は、輸出額の100%即時撤廃。日豪EPA(輸出額の75%が即時撤廃)を上回る水準。

≪ベトナム≫

□ 日本企業が高い輸出関心を有する3,000cc超の自動車について10年目撤廃を実現(70%弱の高関税で保護。日越EPAにおいては関税撤廃は実現せず)。

(TPP協定による我が国工業製品の市場アクセスの改善内容 平成27年10月 経済産業省 より)

ITAとIT製品

ここまでの記述でお気づきと思いますが、工業製品の中にIT機器の名前が出てきません。実はIT機器の関税撤廃については、WTOの協定の一つであるITA(Information Technology Agreement:情報技術協定)によって取り決めがなされています。

1996年に合意し、半導体やコンピュータなどのIT機器(パソコンや携帯電話、プリンターなど約140品目)に対する各国の関税が撤廃されました。参加しているのはWTOに加盟する78の国と地域です。世界貿易総額の約 15%の関税撤廃に貢献し、ITA発効後、対象品目の貿易総額およそ4倍にも拡大しました。

しかし、このITA合意はこれまで一度も対象品目の見直しがなされてきませんでした。その後の20年の間に、当時はなかった新しいデジタル機器が世に出て、それらは関税撤廃の対象にならないままになっていました。TPPの陰であまり話題にはなりませんでしたが、近年の技術進歩にあわせて、対象品目を拡大する議論が2012年からWTOに加盟する国の間で進められてきました。そしてようやく、2015年7月に新たな関税撤廃の対象201品目の合意にいたりました。発効は2016年7月を予定しているようです。

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(毎日新聞 http://mainichi.jp/shimen/news/20150725ddm002020190000c.html より)

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(朝日新聞 http://www.asahi.com/articles/ASH7S5SQ4H7SULFA02T.html より)

経済産業省の報告では、品目合意の内容は「デジタルAV機器、デジタル複合機・印刷機、半導体製造装置、新型半導体、通信機器、医療機器等の合計201品目」とあります。具体的には、デジタル複合機やカーナビ、磁気共鳴画像装置(MRI)、ゲーム機、デジタルビデオカメラの、液晶パネルに使う偏光材料製のシート、半導体用フォトレジストなどがあります。

今回追加された品目の日本から海外への輸出額は年間で約9兆円にのぼり、関税撤廃によって日本企業が負担する関税は約1600億円減るとの見通しがあります。この額はTPPによって支払わなくてもよい関税よりも多いそうです。電気関係の業界にとってはTPPのメリットよりもITAのメリットの方が大きいようです。

(参考)

WTO(世界貿易機関)

「関税および貿易に関する一般協定(GATT)」を発展的に解消して1,995年に発足しました。約160カ国と地域が参加し、モノ・サービス・知的財産権を含む世界貿易を統括し、裁判に似た紛争処理制度を採用しています。

FTA(Free Trade Agreement)

日本語では「自由貿易協定」と呼ばれています。対象の国は2か国で、関税や輸入・輸出許可に伴う様々な企業への規制を原則10年以内に取り払いモノやサービスを自由に行えることを取り決めた条約です。

EPA(Economic Partnership Agreement)

経済連携協定と日本語では呼ばれています。貿易の自由化だけではなく、人の移動、投資の自由化、知的財産権の保護など分野で特定の国・地域間のルールを取り決めた条約です。

 

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