STEM教育

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STEM教育

STEM教育という言葉を日本でも時々耳にするようになってきました。STEMはScience(科学)、 Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとったもので、科学教育、技術教育、工学教育、数学教育を統合した教育を推進しようというものです。オバマ大統領がSTEM教育を優先課題の一つとして、一般教書演説等で取り上げたことなどから注目されるようになったのではと推測します。

アメリカでは、STEM教育を科学と数学を基礎に展開する「科学技術人材育成」と捉えているようです。オバマ大統領は就任して以来ずっとSTEM教育を優先課題としてきているわけですが、それは、理数系の教育に力を入れないと、科学技術だけでなくビジネスの分野でも国際競争力を発揮できなくなるという危機感からです。オバマ大統領は再選直後に、「変革とは、どんな年代の人でも、良質な職に就くための技能と教育を得られる国にすることだ」「・・・今後は高技術、高賃金の雇用が中国へ流れないよう、数学と科学の教師を10万人採用し・・・」などと述べています。

また、大統領科学技術諮問委員会が、2012 年2月に大統領に出したレポートでは、「米国が今後も科学技術分野での優位性を保つために、STEM分野の専門家を今後10年間において100万人増員する必要がある」提言しています。このように、STEM教育は、アメリカにおいては科学技術の優位性を支え、維持していくための国家的戦略と捉えているようです。

アメリカ政府のSTEM に関する主な目標に次のようなものがあります。

〇 2020 年までに初等中等教育の優れたSTEM分野の教師を10万人養成する。

〇 初年次から高校卒業までの間でSTEM 分野の経験を持つ若者を毎年50パーセント増加

〇 今後10年間でSTEM分野の大学卒業生を100万人増加

〇 大学卒業生にSTEM の専門知識や応用研究を学ぶ訓練制度を提供

これらの方策のために年間約30億ドルの予算がSTEM教育に投じているそうです。

このようなSTEM教育は、従来の理科教育、科学教育をとらえ直し、新たな体系化を図る動きとも言えます。さらにアメリカの特徴としては、産学連携事業が強調され、地域の企業が積極的にSTEM教育に参画していることが挙げられます。

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(http://www.scte.org/SCTE/About/STEM/SCTE/About/SCTE_STEM_Education_and_Career_Initiatives.aspx?hkey=f8efdb7e-fd9d-4c51-96db-98767be532cb より)

日本のSTEM教育

各国が科学技術教育に力を入れている中で、日本は理科離れが叫ばれ、一向に改善の兆しが見えていないようです。2014年2月に経済団体連合会は、「既に、欧米をはじめ各国ではSTEM教育やMINT教育を、創造性や起業家精神の涵養までも加味しながら強化している。他方、わが国においては、「理科離れ」が進むなかで、大学が輩出する理工系人材の質の低下が懸念されている。今こそ理工系人材の育成を国家の重要戦略の一つとして積極的に推進すべきである。」と提言しています。

文部科学省は、学習指導要領の見直しや入試制度、センター試験の改革などを進める一方、「スーパーサイエンスハイスクール」や「国際科学技術コンテスト」「科学の甲子園」「グローバルサイエンスキャンパス(GSC)「次世代科学者育成プログラム」「中高生の科学研究実践活動推進プログラム」などの取組を行うなど、理科教育・科学技術教育の充実を進めているようですが、国家戦略と位置付けるアメリカなどに比べると見劣りがするように感じます。そもそもSTEM教育という言葉そのものが、日本の文部科学行政ではあまり使用されていないように思えます。STEM教育をテーマに研究している機関も、埼玉大学のSTEM教育研究センターなどその数も限られているようです。埼玉大学では2002年からSTEM教育研究センターを開設し、ロボットやレゴブロックなどを教材として活用するSTEM教育カリキュラム「SCCIP」(スキップ)の普及を図っています。また、岐阜市教育委員会は2013年度から、岐阜市型STEM教育推進事業を展開し、小学校の理科の授業で教員をサポートする「STEM支援員」支援員などを配置しています。

民間のSTEM教育のうごき(例)

〇ステモン

ステモンは、株式会社ヴィリングがITを活用できる人を育てるという理念のもとに運営するSTEM領域のものづくり型教育に特化した学習スクールです。

現在、小学1年生~4年生を対象に「ITエンジニアリングコース」を開講していますが、さらに、プログラミング教育に特化した「プログラミングコース」も新設しました。このコースは小学3年生以上を対象に、オリジナルゲームの開発、ロボットを制作して動かすといったカリキュラムなどを実施します。

〇ソニー・グローバルエデュケーションと学研ホールディングス

ソニー・グローバルエデュケーションと学研ホールディングスは2015年11月にSTEM教育サービス事業の拡大に向けて業務提携契約を締結しました。2社は今回の業務提携により、学研グループの教育コンテンツ開発力とソニー・グローバルエデュケーションのプログラム開発力やソフトウェア、ネットワーク関連の技術力、グローバルな事業ネットワークなどを掛け合わせ、STEM教育に関する教育プラットフォームやカリキュラム、プログラムなどを共同で事業開発する予定とのことです。

〇CANVASとセールスフォース・ドットコム

特定非営利活動法人CANVASと株式会社セールスフォース・ドットコムは、創造・表現活動を通して、楽しみながら様々な科学技術に親しむ教育プログラムを提供し、それをより多くのこどもたちが体験できる機会をつくりだすことをねらいとしたSTEM教育プロジェクトを始動しましたい。

現在、都内の小学校でプログラミングワークショップを実施しているそうですが、その他の小中学校、公立図書館や教育関連施設での連携も計画しています。

〇(株)ロボット科学教育

ロボット教材を使ったオリジナルカリキュラムで科学を楽しく学ぶ学習塾を全国的に展開している(株)ロボット科学教育は、これまで各教室で提供していた小学校低学年向けSTEM教育プログラムを全国の学童保育向けに映像講座として提供開始することを発表しました。映像講座として提供するのは、ロボット科学教育の500以上のオリジナルカリキュラムのうち、小学1・2年生を対象にした「Kicksジュニアエリート」です。

〇mBot

mBotは中国・深センを拠点とするスタートアップ企業のMakeblockがSTEM教育のために開発したロボットです。子供でも簡単に組み立て、プログラミングを学んで動かせるロボットです。電波法令の技術承認の関係で、日本ではこれまで販売されていなかったとのことです。

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(http://www.geeky-gadgets.com/mbot-educational-robot-launches-for-49-08-04-2015/ より)

〇アクセンチュアと横浜市

アクセンチュアと横浜市は2015年12月に「オープンイノベーションの取組に関する包括連携協定」を締結しました。その中に“青少年への「STEM教育(理数系教育)」”が入っています。アクセンチュアがCSR(※1)の一環で実施してきたSTEM人材を育成するための小中学生向けのプログラミングワークショップを、市内の小中学校の授業に導入するというものです。市内小学校で「ドローン」を使ったロボットプログラミングの授業が12月に実施されたようです。

(※1)CSRとは、「corporate social responsibility」の頭文字をとったもので、企業が利益を追求するだけでなく、企業が社会に対して責任を果たし、社会とともに発展していくための活動です。

〇ラーニングシステム

LEGO Education正規代理店でもあり、「SCCIP(※2)メンバーシップ教室」を展開しているラーニングシステムは、インドでSTEM教育の普及を図っています。採用校数は毎年倍のペースで増えているそうです。名門私立学校が採用したことでインド全国に知れ渡ったようで、メディアも取り上げるまでに注目されているようです。

(※2)SCCIP とは、Self esteem(自分を大切にする心)、Creativity(想像を創造に変える力)、Communication skill(共感と行動を呼び起こす力)、Imagination(想像を広げる力)、Problem solving skill(問題を解決する力)の頭文字をとったもので、SCCIPメンバーシップクラスの核となるコンセプトです。

〇Windowsクラスルーム協議会(WiC協議会)

WiC協議会とは、インテルやマイクロソフトなどのIT関連企業と東京書籍や光村図書などの教科書会社などが発起企業となって、21 世紀のグローバル化社会を生きる子供たちの学びと、その教育に携わる教職員を ICT の側面から支援することを目的に、学校教育における ICT の導入・利活用の提案、サポートを行う団体です。

具体的には、STEM教育を普及させるために教育機関向けクラウドサービス、プログラミング教育ツールのMinecraftEduやレゴ マインドストームなどを提供するだけでなく、それらを使って授業を設計する方法を教員に指導したり、マイクロソフトでは独自に「Microsoft Showcase School」に認定して、ITを活用した授業を支援することを行っています。将来のSTEM人材育成をねらいとした取組みです。

〇トゥルース・アカデミー(Truth Academy)

トゥルース・アカデミーでは2000年から「ブロックとロボットで学ぶ科学教室」を展開していますが、

PISA型学力の育成を目指して、ブロック・サイエンス(レゴ教室)、ロボット・サイエンス(ロボット教室)、リトル・ダヴィンチ理数教室などを実践しています。また、科学館や中学・高校にロボット授業や、幼稚園・保育園に科学の授業を提供しています。

こうした実績で培ってきたカリキュラム/指導法/ワークシート等のノウハウをパッケージ化した「STEM教育支援プログラム」の提供も行っています。

 

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