Power By The Hour

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Power By The Hour

Power by the Hourとは、航空機においてエンジンの出力と使用時間の積に応じて、エンジンの利用者である航空会社に利用量を請求するというロールスロイスのサービス(課金体系)のことです。エンジンを商品として売るのではなく、エンジンを使用した時間や回転数を商品として売るわけです。

これまでは、航空会社は航空機を購入又はリースして、エンジンの整備も自前でやってきました。ですからとりわけ資源力の弱いLCCなどにとっては、航空機を買い取ったりリースしたりせず、「ジェットエンジンの推力」だけを購入するとことは、初期投資を抑えられ、整備するためのコストも削減できるというメリットがあります。

また、航空機では小さなトラブルも乗客・乗務員の命に直結しますので、機体の整備は非常に重要であり、多くの労力と時間をかけなければなりません。Power by the Hourでは、エンジンの整備に関して、消耗品や交換部品の数、整備士の配置や人数など、全てロールスロイスの役割になります。航空会社にすれば、機体整備は直接の利益を生まない時間ですから、そうしたことに余計なコストをける必要のないPower by the Hourという料金体系は、とても利点があるようです。

Power by the Hourは、使った分だけ料金を支払う水道や電力などの料金体系、あるいは使った分だけのお金を払う「富山の置き薬」などと似ているかもしれません。

ロールスロイスのPower by the Hourでは、ジェットエンジンのあらゆる場所に様々なセンサーを搭載しデータを取得・蓄積しています。そうしたデータを解析することで、整備の内容、必要な部品などが把握でき、交換部品などを事前に必要な数だけ用意することができます。また、データは、使用料金の算出にもちろん利用されるわけですが、他にも効率的な飛行計画・フライトパターンの見直しにも役立てられており、その結果を航空会社に提言することで、サービスの差別化を図っています。

ロールスロイスの場合、1時間あたり数十ドルでエンジンの保守を受託し、別料金を払えば運行中のモニタリングもするようです。民間航空機エンジン部門の収入の7割がサービスによるものと言われています。

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(http://www.slideshare.net/sdnetwork/sdnc13-day1-the-service-design-imperative-by-nick-leon より)

サービタイゼーション(servitization)

ロールスロイスのPower by the Hourのように製造業がモノ(エンジン)を売り切るのではなく、製品を通じたサービスを提供をビジネスの柱としていくことをサービタイゼーションあるいはサービサイジングと言います。これまでの「アフターサービス」ではなく、サービスの機能をより広く・深く展開して収益につなげていくものです。

こうした動きの背景としては、製品そのもので差別化を生み出し、競争力を付けることが難しくなってきたことがあるのかもしれません。新製品のコモディティ化(※1)の進展は非常に速く、そうすると製品の販売だけではなかなか利益を上げることができなくなります。そこで製品にサービスを組み合わせることで収益を高めようというわけです。

(※1)コモディティ化とは、高付加価値の製品の市場価値が低下し、低価格・普及品になることを指します。顧客から見るとどのメーカーの製品を買っても同じで、価格以外の魅力に乏しくなります。

ところで、製造業のサービスモデルには3つのモデルがあるそうです。「Break/Fixモデル」、「Preventive Maintenanceモデル」、「Preemptive Service モデル」です。Break/Fixは製品の修理、Preventive Maintenanceは保守点検というこれまでの「アフターサービス」の範疇に入るものといえます。ロールスロイスのPower by the Hourは、それらのサービスとは違う新しい「Preemptive Service モデル」に属するようです。Preemptive Serviceモデルとは、メーカーは製品を販売するのではなく、製品を使ったサービスを販売します。先の2つのサービスは製品についたものでしたが、このサービスは、サービスに製品が付いているといえます。

ロールスロイスの他にも世界最大の航空機エンジンのメーカーであるGE(ゼネラル・エレクトリック)は、飛行中の自社のエンジンの状況をリアルタイムでモニタリングし、障害状況等を解析して整備計画や管理自体を提案し、製品の耐用年数を長くするというサービスを行っています。GEではフライト中のエンジンデータから、トラブルの発生箇所やメンテナンスを必要とする箇所を着陸前に把握し、フライト後即座にどのエンジンのどの部品チェックしなければならないかが分かる仕組みになっています。このことで、整備作業の効率を大幅に改善し、また航空機の発着の遅延も少なくなり、遅延によるコストの削減にも役立っているようです。さらに、機体のセンサーから生み出されるデータの解析から最適なフライトパターンも見いだすことができ、燃料の効率化を図ることも可能となっています。

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(https://www.ge.com/digital/industrial-internet より)

製造業のサービスを売るというビジネスについて、そのリスクを指摘する議論もあります。サービス化の初期には収益の向上があるものの、その後、組織上・認識上の障害が原因となって期待した収益を得られないあるいは収益が低下してしまう場合があるというわけです。とは言え、iotの進展とともにこうした新しいビジネスは、航空業界だけでなく様々な産業に広がりを見せているようです。

 

2件のコメント

  1. 大変参考になります。
    この内容を業界団体(金属加工業関連)でのIoT勉強会に使いたいのですが、どのように許可を頂けばよろしいでしょうか?

    1. ご連絡を有難うございます。
      勉強会でご利用されるということで承知いたしました。どうぞお役に立てていただければと思います。
      宜しくお願い致します。

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