FlexTech Alliance

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FlexTech Alliance

FlexTech Allianceは、先進型ウェアラブル技術の開発を目的として2015年8月末に設立された団体です。米国防総省が主導する官民共同のプロジェクトで、「Flexible Hybrid Electronics Manufacturng Innovation Hub」というR&D拠点(企業などで科学研究や技術開発などを担う部署で、「R」は“Research”(研究)を、「D」は“Development”(開発)を表しています。)をシリコンバレーのサンノゼに開設するそうです。

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(http://flextech.org/imprint-energy-completes-flextech-alliances-printed-battery-project/ より)

運営資金は、米国防総省が7500万ドル、企業が9000万ドル以上を負担し、総額は5年間で計1億7100万ドルを予定しています。参加する企業はアップル、ボーイング、ヒューレット・パッカード、クアルコム、コバック、モトローラ、ゼネラル・モータース、帝人デュポンフィルム、イーストマンケミカル社、富士フイルムDimatix社など96企業、アルゴンヌ国立研究所、ヒューズ研究所、シャープラボなど11の研究所、カリフォルニア州立工科大学、ジョージア工科大学、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、プリンストン大学、スタンフォード大学など41の大学、さらに州政府や地域団体などあわせて162団体が参加を表明しています。

FlexTech Allianceのねらい

ホワイトハウスの発表を見ると、同グループが行うのは、高性能の印刷技術を活用して柔軟で伸縮性のある基盤に、複数のシリコン回路およびセンサをパッケージングし、人間が身に着けたり、艦船や航空機の翼などの表面に貼り付けることが可能な電子デバイスの研究開発です。国防総省が主導していることからも民生用だけでなく軍事用での応用も視野に入っているようです。

例えば、高齢者や負傷した兵士を支援するアシストスーツ、負傷兵士用の義肢、スマートバンデージ(包帯)、厳しい環境でも機能する航空機・自動車向けの内蔵センサー、軽量ロボットや陸海空・宇宙での利用も含めた次世代イメージセンサなどです。こうした研究開発を通して、この分野での米国の競争力強化をも狙っています。

(https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2015/08/28/fact-sheet-obama-administration-announces-new-flexible-hybrid 参照)

米国の先進製造イニシアチブ

アメリカは、製造業回帰を重視する政策「先進製造イニシアチブ」を推進しています。それは、2010年に中国が製造業の生産高で米国を抜いて中国が世界1位となり、このままでは研究開発などの知的部門の優位性も奪われかねないという危機感が発端となっているようです。

このイニシアチブでは、全米に45の先進製造拠点を作り、研究室の優れた革新的技術を市場に投入するとともに、人材育成やベンチャー創出支援策などの取組が行っています。

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(日刊工業新聞 https://newswitch.jp/p/356 より)

今回の国防総省主導のFlexTech Allianceの設立も、こうしたアメリカの製造業の競争力を強化しようという政策の一環と捉えることができるのではないでしょうか。

アメリカは、オバマ大領が誕生した2009年に現在の米国の産業技術政策の基本的な方針「米国イノベーション戦略~持続可能な成長と質の高い職に向けて~(America Innovation Strategy:Driving Towards Sustainable Growth and Quality Jobs) 」を発表しています。

この方針では図に示す3つの柱を据え、アメリカの競争力の回復を目指しています。

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(平成22年度産業技術調査事業(海外技術動向調査)カントリー・レポートhttp://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/tech_research/pdf/USA.pdf より)

その中の「国家優先事項におけるブレークスルーの推進」には、① クリーン・エネルギー革命の推進、② 高度車両技術の支援、③ ヘルスITにおけるブレークスルー支援、④ 21世紀における「グランド・チャレンジ(Grand Challenge)22」の解決に対応(「グランド・チャレンジ」とは、米国民の生活の質を向上させ、産業基盤の強化及び雇用の創出において重要と考えられる挑戦を指し、例えば、太陽電池の低価格化や自己発電で消費電力をまかなうビル建設、医療分野ではDNA解析や再生医療などです。)があります。今回の国防総省主導のFlexTech Allianceの設立は、米国イノベーション戦略の具体的支援項目として掲げた「ヘルスITにおけるブレークスルー支援」の延長線上にあるようにも思えます。

製造業の競争力強化に向けては、アメリカの「インダストリアルインターネット」、ドイツの「インダストリー4.0」、フランスの「産業の未来 (l’Industrie du Futur) 」、中国の「中国製造2025」など、各国が国を挙げて取り組んでいます。しかしながら日本では、ロボット大国を自任しながら「ロボット革命イニシアティブ協議会」には予算は付けられていません。何とも寂しい限りで、このままでは日本の製造業の将来が下請け化するという声も、まんざら絵空事ではないようにも思えてきます。

 

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