Arbeiten 4.0

2500648_R

第4次産業革命とArbeiten 4.0

Arbeiten 4.0は日本語では「労働4.0」とされています。2015年の4月にドイツの連邦労働社会省(BMAS)が立ち上げたプラットフォームで、第4次産業革命を見据えた未来の働き方と制度のあり方検討プロジェクトです。具体的には、インダストリー4.0の実現に伴って、人々の労働がどう変わるのか、また、デジタル時代における労働上の課題は何かについてワークショップ、アンケート、市民との対話、科学調査などを通して調査し、デジタル化時代の労働者の良質な労働を考えるというものです。

Arbeiten 4.0は2つの討議グループからなり、1つは、労使団体、学識者、その他の社会団体からなる「専門家グループ」、もう1つは、サイトやSNSを活用してコメントやアイデアを公募する「一般市民グループ」です。
このプロジェクトの成果をまとめた白書「労働4.0(Weißbuch Arbeiten 4.0)」は、2016年11月に発表されました。

「労働1.0」から「労働4.0」

arbeiten_001_R

(Grünbuch Arbeiten 4.0 https://www.bmas.de/SharedDocs/Downloads/DE/PDF-Publikationen-DinA4/gruenbuch-arbeiten-vier-null.pdf?__blob=publicationFile より)

Arbeiten 4.0の8つのアイディア

白書は、5章からなり、1章から3章でデジタル化が及ぼす雇用への影響等を分析しています。そして第4章「GESTALTUNGSAUFGABEN」、英語ではデザインオブジェクトで、次の8つの政策が提案されています。
1 就業能力:失業保険から労働保険へ。
2 労働時間:フレキシブル、しかし自己裁量権を。
3 サービス:良質な労働条件を強化。
4 健康な仕事:「安全衛生4.0」へのアプローチ。
5 データ保護:高水準を確保。
6 共同決定と参加:パートナーシップ(労使)で構築。
7 自営:自由の促進と保護。
8 社会福祉国家:将来展望と欧州諸国との対話。

「労働4.0」のイメージ

arbeiten_002_R

(Grünbuch Arbeiten 4.0 https://www.bmas.de/SharedDocs/Downloads/DE/PDF-Publikationen-DinA4/gruenbuch-arbeiten-vier-null.pdf?__blob=publicationFile より)

厚生労働省の2016年海外情勢報告でも、「Arbeiten 4.0」について取り上げていますが、特に「選択労働時間」「労働保険」「就業者口座」という耳慣れない言葉に注目しているようです。

・・・・労働の時間や場所に関してより多くのオプションを提供する「選択労働時間法」、職業能力の強化等に予防的に取り組む「労働保険」、若年者に初期投資資金を与えて技能取得や起業等に利用する「就業者口座」などの概念が提案されている。・・・・
(厚生労働省2016年海外情勢報告 http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/17/dl/t3-03.pdf より)

8つの政策についてもう少し詳しく紹介すると、
「就業能力:失業保険から労働保険へ」とは、失業前から職業訓練を受けてスキルアップを図り失業リスクを減らすというものです。
「労働時間:フレキシブル、しかし自己裁量権を」では、選択的労働時間制度を設けることや「長期労働時間口座」という制度拡大などを挙げています。ドイツでは、労働者が残業をした場合に、その残業時間を銀行口座のように貯めておき、後日休暇などで相殺する「労働時間口座」がありますが、これをモデルにしたものです。
「サービス:良質な労働条件を強化」では、低賃金で不安定な仕事の発生が懸念される「オンデマンドサービス」分野での使用者団体、労働組合、政府、消費者団体等の間で、社会的な合意規範が必要であることや、「保育・家事、介護」などの対人サービスにおいて、サービス提供者への代金支払い、社会保険支払い、課税控除申請等を一括で行うことのできる「家庭向けサービス口座」の創設を提案しています。
「健康な仕事:「安全衛生4.0」へのアプローチ」では、デジタル化によって誘発される精神的ストレスの原因と労働者の健康に与える影響を正確に把握する必要があると述べています。
「データ保護:高水準を確保」では、データ保護のための指標を開発し、より高度なデータ保護に努めていくとしています。
「共同決定と参加:パートナーシップ(労使)で構築」では、労働組合と使用者という「社会的パートナー」による労働条件決定や共同決定の仕組みは重要であり、今後も持続していくとしています。
「自営:自由の促進と保護」では、デジタルプラットホームの普及状況やクラウドワーカーの属性や規模を把握するために統計の収集方法を改善する必要があるとしています。クラウドワーカーとは、WEB製作、システム開発など、企業が業務の一部を外部化することで、企業外で働く手法です。
「社会福祉国家:将来展望と欧州諸国との対話」では、フランスで2017年1月に導入された「活動個人口座制度(Le Compte personnel d’activité: CPA)」をモデルにした「個人就業口座(Das Persönliche Erwerbstätigenkonto)」の創設が提案されています。

(独立行政法人 労働政策研究・研修機構:白書「労働4.0」―デジタル化に対応した「良き労働」の実現に向けて http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2017/04/germany_01.html 参照)

Arbeiten 4.0と働き方の未来 2035

「労働4.0」では、日本では耳慣れない制度も取り上げていますが、全く新しいアイディアというわけではないようです。既存の制度を改善したり、これまでの制度を改めて認識したりすることでデジタル化時代に適応していこうということのようです。

日本でも今「働き方改革」と言われています。2016年8月に「働き方の未来 2035:一人ひとりが輝くために」懇談会から「働き方の未来2035」という報告書が出されました。その中で、技術革新は大きなチャンスであり、それを生かすには新しい労働政策の構築が不可欠としています。また日本型セーフティネットについても提案しています。そして、「技術革新によって劇的な変化が予想される未来においても、そのデジタル以外の強みを大いに発揮し、個々人が働きがいや生きがいを感じながら『個』を活かして自分らしく輝ける社会。これこそが、目指すべき2035 年の姿である」と述べています。
日本においても、「労働4.0」のような第4次産業革命における働き方の在り方に関する具体的な議論が求められるようにも思います。
(「働き方の未来 2035」 ~一人ひとりが輝くために~ 報告書 2016年8月「働き方の未来 2035:一人ひとりが輝くために」懇談会 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/jinzaiikusei_dai1/sankou2.pdf 参照)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です