AgTech

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アグテック(AgTech)

Agtech(アグテック)とは、農業(Agriculture)と技術(Technology)を組合せた造語です。この言葉の定義・解釈は様々なようです。

人工知能やIT、ロボティクスをはじめとした先端のテクノロジーを農業に応用させることあるいは応用した効率的な農業を指すこともあります。また、農業とITテクノロジーが重なり合う事業領域やIT技術に特化した農業分野のスタートアップのことを指すこともあり、どちらかと言えばこちらの使い方が多いように感じます。その他、センサーやドローン、クラウド、モバイルデバイスを駆使した農業のIoT化ととらえることもあるようです。

よく似た言葉にスマートアグリ(農業)がありますが、スマートアグリは、IT(ICT)やロボット技術、センシング技術等の先進技術を活用して生産管理や品質・生産効率などの向上を実現し、ノウハウがなくても効率的に行える賢い農業です。このスマートアグリとアグテックを同義語として扱っていることもあるようです。

精密農業という言葉もあります。先端技術を使った農業というイメージがありますが、農林水産会議では、次のように定義しています。

精密農業とは、農地・農作物の状態を良く観察し、きめ細かく制御し、その結果に基づき次年度の計画を立てる一連の農業管理手法であり、農作物の収量及び品質の向上を目指します。

(農林水産研究開発レポート No..24 「日本型精密農業を目指した技術開発」 ポイントhttp://www.s.affrc.go.jp/docs/report/pdf/no24_gaiyou.pdf より)

少々分かりにくいのですが、一枚の田んぼや畑であっても土壌水分量、水温、日照、pH、肥料などにばらつきがあります。これまで農家はそうしたことに経験と勘で対応してきました。その経験と勘にたよることなく先端の科学技術を用いて管理し、収穫や品質のばらつきをなくそうというのが精密農業です。前述の農林水産研究開発レポート No..24には、精密農業を支援するツールとして次のようなものを挙げています。

1)観察ツール:フィールドサーバ、衛星リモートセンシングなど農作物の生育状況を把握できるシ ステム
2)制御ツール:肥料などの投入量を場所ごとに自動調整できる可変作業機
3)収穫ツール:米の収量や籾の水分を自動測定できる収量コンバイン
4)解析ツール:収量等をマップにより視覚化し、営農計画に活用できる情報解析ツール
(農林水産研究開発レポート No..24 「日本型精密農業を目指した技術開発」 ポイントhttp://www.s.affrc.go.jp/docs/report/pdf/no24_gaiyou.pdf より)

これを見ると、精密農業は農業管理手法で、それを実現するツールにアグテックとも重なる部分があると理解できます。

農林水産省はAI農業という言葉も使っています。ここでのAIは人工知能ではなく、アグリ・インフォマティクス(農業情報科学)の略です。農林水産省の定義では「今後急速に失われていく可能性のある篤農家の「匠の技」(暗黙知)を、ICT技術を用いて「形式知」化し、他の農業者や新規参入者等に継承していく新しい農業」としています。具体的には、次のような農業としています。

・・・・センサーによって取得した作物情報・環境情報と、篤農家の「気づき」・「判断」の情報を的確に統合することにより、篤農家の「経験」や「勘」に基づく「暗黙知」を「形式知」化し、農業者の技能向上や新規参入者の技能習得に活用する農業である。

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(ICT農業の現状とこれから(AI農業を中心に) 食料産業局知的財産課 平成27年11月農林水産省http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sosyutu/sosyutu/aisystem/pdf/ict_ai.pdf より)

AI農業を実現するためのAIシステムはアグテックと見ることができそうです。

アグテック関連の市場規模

2016年10月にマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社が発表した「日本における農業の発展、生産性改善に向けて」というレポートにおいて、今後の日本の農業の課題として「原材料コストの削減」や「農業バリューシェーンの効率化」など5つ挙げています。その中の一つに「アグテックの可能性」があります。そして、今後、日本の農業が注力すべき方策として、アグテックのような将来技術への国内外のバリューチェーン横断的な投資が必要としています。
報告書の中では、アグテックはフィンテックに並んで可能性がある分野であり、ベンチャー企業による食料および農業分野への投資額は、2013年は9億ドルだったが、2015年には46億ドルと5倍に増加していると紹介してます。

agri_005_r(AgTech Investing Report Agfunder https://research01.agfunder.com/2015/AgFunder-AgTech-Investing-Report-2015.pdf より)

シード・プランニングが2016年7月に発表した農業IT化の現状と将来展望に関する調査結果では、農業IT化の市場規模は2015年が推定165億円で、2020年に732億円になると予想しています。

agri_004_r(シード・プランニング プレスリリースhttp://www.seedplanning.co.jp/press/2016/2016071201.html より)

2016年11月に矢野経済研究所が発表した「スマート農業に関する調査(2016)」では2015年度のスマート農業の国内市場規模は 97億2,400万円と推計しし、2020年度は232億8700万円、2022年度は331億8,600万円と予測しています。

agri_006_r(矢野経済研究所 プレスリリースhttp://www.yano.co.jp/press/pdf/1613.pdf より)

日本ではようやくアグテックが注目され始めてきましたが、海外ではFinTechと同等かそれ以上の投資を集めているようです。ちなみにGoogleも2015年に種子や土壌のデータを解析し、農家に生産効率改善や経費節減を促すネットワーク構築を進める2014年に設立された新興企業であるファーマーズ・ビジネス・ネットワークに投資をしています。

アグテックの分野

Agfunder の「AgTech Investing Report」では、農業ITベンチャーを「食品関連eコマース」「灌漑・ムズ関連技術」「ドローン・ロボット」「土壌・種子関連」「フードテック」「流通追跡技術」「意思決定サポート・データ分析」などいくつもの分野から分類しています。また、精密農業に関するテクノロジーを、「ドローン」「衛星・画像分析」「ロボット」「気象関連サービス」「灌漑・水関連技術」「ハードウェア、センサー」などから分析しています。ですから、アグテックといってもその範囲は非常に広いようです。

日本でもアグテック分野へ大手やベンチャー企業が進出しいますが、その事業内容を見ると「経営の見える化」「流通支援プラットフォーム」「企業的農業経営を支援するクラウドサービス」「営農計画の立案や生産性の診断、営農指導などの支援」「酪農・畜産向けの牛群管理システム」など多岐にわたっています。

例えば、トヨタ自動車は自動車工場でのノウハウを応用して農作業の効率化を行う「豊作計画」、クボタは、「KSAS」という農業支援システム、NTTドコモとベジタリアは水田センサーシステム、ベンチャー企業のSenSproutはインクジェットプリンターで電子回路を印刷する技術とエネルギーハーベスティングを組み合わた低価格のセンサーの農地への導入、ファームノートは、PC・タブレット・スマートフォンで、いつでもどこでも、牛群の様々な情報を管理・記録・分析するシステム、アグリノートはGoogle マップ・航空写真を利用したインターネット上の農業日誌・圃場管理ツール、PaddyWatchは水田センサの情報をスマホやタブレットで管理する田んぼの見回り代行、テラスマイルはICTデータを活用した営農支援コンサルティングや人工知能を活用した次世代農業経営メソッドの開発など、実に様々な分野に得意とするテクノロジーを生かして取り組んでいます。

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