2025年の崖

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2025年の崖

2015年の日本にはいろいろな課題があるようです。よく言われるのは、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、介護・医療費などの社会保障費の急増が懸念され「2025年問題」です。また、2025年が昭和100年にあたることから、古いシステムにトラブルが発生するのではという「2025年問題」があります。さらに、加入電話やISDNなどの公衆交換電話網(PSTN)が寿命を迎えて2025年には廃止されるという「2025年問題」もあります。

こうした「2025年問題」に加えて、先日(2018年9月7日)、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」から『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』という報告書が発表されました。研究会の議事録には、「2025年の壁」という表現を「ホラーストーリー型」と称していましたが、2025年までにデジタルトランスフォーメーションが進まないと、日本はデジタル競争の敗者になるという警告を込めた言葉のようでもあります。

この報告書は、デジタルトランスフォーメーションを進めるための課題及び対策を検討するために設けられた研究会から、2018年5月から8月まで4回の会合と4回のWGを経て中間の取りまとめとして出されたものです。

現状と課題

報告書では、あらゆる産業において、ゲームチェンジが起きつつあり、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことが求められているが、投資が進む一方で実際のビジネス変革につながっていないとしています。その足かせになっている原因として、既存のITシステムの老朽化や複雑化、ブラックボックス化により、データが十分に活用されず、データの利活用・連携が限定的となっていること、既存システムの維持、保守に資金や人材が割かれ、新たなデジタル技術を活用するIT投資にリソースを振り向けることができないこと、既存のITシステムとビジネス・プロセスに密結合していることから既存システムの問題の解消が現場サイドの抵抗を生むことなどを挙げています。

技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化が経営の足かせ、高コストの原因となっているこのようなシステムをレガシーシステムと定義しています。

12兆円の経済損失

こうした原因を克服できずに2025年まで放置されてデータ活用が進まなかった場合、市場の変化にビジネス・モデルを柔軟・迅速に変更できず、デジタル競争の敗者になってしまうとしています。さらに古いシステムの維持管理費が高額化し、IT予算の9割以上になるとしています。このことを技術的負債と呼んでいます。また、古いシステムの保守運用の担い手の退職や高齢化によってシステムトラブルやデータ滅失等のリスクが高まるとしています。

そして、こうしたことによる経済損失は、2025年以降、1年間に最大12兆円にも上る試算しています。報告書で引用している独立行政法人情報処理推進機構技術本部 ソフトウェア高信頼化センターの報告によれば、2014年の国内でのデータ損失やシステムダウン等のシステム障害による損失は4兆9500億円とのことですのですので、現在のおよそ2.5倍から3倍にもなることになります。(https://www.ipa.go.jp/sec/reports/20160229.html 参照)

一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書 2016 -ユーザー企業のIT投資・活用の最新動向(2015年度調査)一」によれば、企業の保有している大きなシステムほど利用期間が長く、20.4%が21年以上も前のシステムを保有し、そのうちの40.4%が自社要員で開発したものとなっています。さらに、10年~20年以前が39.1%となっており、この状態のままだと、2025年には21年以上稼働しているシステムの保有企業の割合は60%になるとしています。その上で、IT人材の引退やサポート終了等によるリスクの高まりなどレガシーシステムに起因するトラブルリスクが3倍になると推定すると、経済損失が12兆円にあるということのようです。

(企業IT動向調査報告書 2016 ユーザー企業のIT投資・活用の最新動向 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)http://www.juas.or.jp/cms/media/2017/02/16itdoukou.pdf 参照)

DX実現のシナリオ

報告の終わりにはDX実現のシナリオが示されています。例えばとして、2020年頃に向けて、システム刷新に向けたプランニングを行い、先行実施できる企業は2020年前に刷新を進めること、2021年から2025年にかけて、既存システムの刷新を最優先に集中的に進め、老朽化、複雑化、ブラックボックス化を解消し、データをフルに活用した本格的なDX実行を可能にしていくというプランが示されています。

このシナリオのように2025年までに新たなデジタル技術を活用して新しいビジネス・モデルを創出できれば、2030年に実質GDPの130兆円超の上積みが実現できるとしています。ちなみに、総務省の「平成29年版情報通信白書」の「第3章 第4時産業革命がもたらす変革」では、景気循環の影響を除いた経済成長率、いわゆる潜在成長率並みで将来にわたって推移すると想定した「ベースシナリオ」と、IoT・ビッグデータ・AI等の導入や企業変革が進展した場合の「ICT成長シナリオ」の比較があります。それによると人口減少下でも持続的な経済成長は可能で、2030年の実質GDPを132兆円押し上げ、725兆円になるとなっています。(平成29年版情報通信白書 参照)

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(経済産業省 DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ http://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf より)

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