RoHSとサイレントチェンジ

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RoHS

『欧州特定有害物質規制(RoHS)が改正され、2019年から新たに4物質の使用が制限される。対応が慌ただしくなるにつれ、「サイレントチェンジ」への警戒も強まっている。』

こんな記事がメディアで報道されていました。欧州特定有害物質規制(RoHS)やサイレントチェンジなど聞きなれない言葉かもしれませんが、電子製品を扱う企業にとっては気に留めておくべき重要な言葉かもしれません。

さて、欧州特定有害物質規制(RoHS)ですが、一般には「RoHS指令」と呼ばれることが多いようです。コンピューターや通信機器、家電製品などの電気製品に、有害な化学物質の使用を禁止する指令で2003年2月に発効2006年7月からEUで施行されました。2006年施行の際の正式名称は「DIRECTIVE 2002/95/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 27 January 2003 on the restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment」という長いものです。一般には、Restriction of the use of the certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment(電気電子機器の特定有害物質使用規制)」からRoHS指令(RoHS Directive)と呼んでいます。
RoHS指令はもう一つの指令であるWEEE指令と表裏一体の関係にあるため、WEEE指令と同時に発効・施行されています。WEEE指令とは、廃電気・電子機器の最終処分量を減らし再生、リサイクルを推進するための指令で、RoHS指令は、そのWEEE指令による廃電気・電子機器のリサイクルを容易にし、最終的に処分された際に、ヒトと環境に影響を与えないように有害物質を非含有にすることを目的としています。
改正前のRoHS指令の規制していたのは次の6物質です。

規制対象物 基準値(閾値)
鉛(Pb) 1,000ppm
水銀(Hg) 1,000ppm
カドミウム(Cd) 100ppm
六価クロム(Cr6+) 1,000ppm
ポリ臭化ビフェニール(PBB) 1,000ppm
ポリ臭化ジフェニールエーテル(PBDE) 1,000ppm

こうした有害物質が使われてきたのには、例えばカドミウムはスイッチの接点部分の耐久性を高めたり、電線ケーブルの被膜を形成するための安定剤、着色剤として優れていたり、ネジ類などの錆止めに用いられてきた六価クロムは、表面に傷がついても傷口をふさいでくれる「自己修復性」があるといった特性があったからです。とは言え、やはり有害物質ですので、使われた製品の処理がずさんだと長い年月の中で溶け出し、土壌や地下水を汚染し、巡り巡って人の口にも入ってきます。そういう意味ではRoHS指令は取り返しのつかない未来にしないための指令とも言えます。
これまでの6物質に加えて今回の改正(2015年6月4日公布)で加えられた新たな4物質とはフタル酸エステル類です。

規制対象物 基準値(閾値)
DEHP(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル) 1,000ppm
BBP(フタル酸ブチルベンジル) 1,000ppm
DBP(フタル酸ジ-n-ブチル) 1,000ppm
DIBP(フタル酸ジイソブチル) 1,000ppm

この4物質については2019年から適応されますが、これらは現在、日本国内で普通に使用されている物質です。フタル酸エステル類は主に、プラスチックなどの可塑剤として広く使用されています。DEHPは塩ビの可塑剤として含有されていますし、電線の被覆材にもフタル酸エステル類は含有されていますので、プラスチックを使用する電子製品ならば必ずと言っていいほどに含まれているといえます。PCやテレビのACアダプター、製品内部の電気ケーブルになどです。ちなみにフタル酸エステル類は環境ホルモンが疑われている物質です。

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(日刊工業新聞http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0520150811afab.html より)

サイレントチェンジ

取引先の素材メーカーによって許可なく、いつの間にか材料の組成を変えられ、それがもとで事故を引き起こすといったリスクのことをサイレントチェンジと呼んでいます。

以前、某社が販売するモデムに使われていた「ACアダプター」が発熱事故を起こすということがありました。原因は、ACアダプターの電極部で使用されている樹脂中の「難燃剤」が、本来ならば「臭素系」のものを使用すべきところが、某社の知らないうちに「赤リン」に置き換わっていたためでした。原因を究明するためルートをたどっていくと、ACアダプターは台湾の部品メーカーから調達したものですが、この台湾の会社は、発熱問題を起した電極部品を中国のメーカーに委託していました。さらに、この樹脂は別の中国メーカーが製造していました。つまり、この樹脂メーカーが難燃剤をリンに変更したとが原因だったわけです。販売した某社から見れば3つ先の会社です。

こうした事故ではサイレントチェンジが意図的に行われたか証明することは難しく、完成品を製造したメーカーが責任を取ることケースが多いそうです。また問題の発覚が遅れると被害額も大きくなり、とてつもない賠償を求められることにも起きてきます。最適調達としてグローバルに調達網を広げることは新たなリスクを背負うことでもあり、調達先が海外に及べば及ぶほど、サイレントチェンジの懸念が強くなると言えます。ですので、サプライチェーンがどのように構成されているか、それにかかわる企業がどのような会社なのかを事前に十分に把握し、そこから見えてくるリスクを抽出しておく事が重要になってきます。

今、RoHSの改正によって2019年7月からEU域内で流通する電子機器はフタル酸エステル4物質の使用が事実上の使用禁止となって、2006年の鉛など6物質の使用を制限の時以上に海外調達が増えていることから、サイレントチェンジへの危機感を企業は募らせているようです。フタル酸エステル類は見分けるためには高度な分析が必要で、成形品に混入すると発見は難しいとのことです。

すでに一部企業ではRoHSの改正によるサイレントチェンジが起きないように対応を始めているようです。

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(日刊工業新聞http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0520150811afab.html より)

 

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