科学技術白書「超スマート社会」

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白書の概要

2016年5月に「平成28年版科学技術白書」が閣議決定され、文部科学省より発表されました。科学技術白書は、科学技術基本法に基づいて科学技術の振興に関して講じた施策について報告を行うものです。本書は大きく1部2章、2部5章から構成されています。第1部では、「超スマート社会」の到来として20年後の我が国の未来社会像を構想するとともに、その実現に向けた取組(Society 5.0)の方向性について述べています。
2部では基盤的技術の研究開発をはじめとする超スマート社会を世界に先駆けて実現するために必要となる取り組みの方向性を示しています。また、冒頭特集として、2000年以降の日本のノーベル賞受賞者について分析し、ノーベル賞受賞者が輩出されるために必要な取組の方向性として、若手研究者への支援の必要性を強調しています。

超スマート社会

科学技術白書の今回のテーマは「超スマート社会」です。この言葉は第5期科学技術基本計画のキーワードとして挙げられたものです。基本計画による定義は「必要なもの・サービスを、必要な⼈に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる⼈が質の⾼いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、⾔語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」です。
超スマート社会は、「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」の次に来る社会と位置付けられており、この新しい社会の実現に向けた一連の取組みがSociety5.0と言えます。具体的には「超スマート社会サービスプラットフォーム」の形成が挙げられますが、そのために必要となる技術はサイバーセキュリティ、 IoTシステム構築、ビッグデータ解析、AI、デバイスなどであり、新たな価値創出のコアとなる強みを有する技術としてはロボット、センサ、バイオテクノロジー、素材・ナノテクノロジー、光・量⼦などを科学技術基本計画では挙げています。本書では、「超スマート社会」における基盤技術の戦略的強化として、サイバーセキュリティ技術、IoTシステム構築技術、ビッグデータ解析技術、人口知能技術などを挙げています。

超スマート社会サービスプラットフォームのシステムイメージ

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(サイバー社会における産業構造の変革と 科学技術イノベーション政策内閣府 総合科学技術・イノベーション会議 久間和生 http://www-higashi.ist.osaka-u.ac.jp/scj/data/symposium09-02.pdf より)

超スマート社会の姿

本書では20年後の「超スマート社会」の姿を架空の家族をモデルにして描いています。本書ではあくまでの可能性のある未来像であり「超スマート社会」の断片であるとはしていますが、こうした未来社会像・ビジョンを国全体で共有し世界に先駆けて実現の必要性について、本書全体を通じて述べられています。
20年後の「超スマート社会」の具体的な未来像として次のようなことをイラスト入りで挙げています。
自動運転車がタイヤの摩耗などを点検して部品の交換を提案、オーダーメードでの乗用車の生産や野菜の栽培、家族の行動、体温、位置に合わせた各人の周辺の適切な温度・明るさの調節、就寝中に異常を自動検知して医師に伝える健康管理システム、橋やトンネルなどをセンサーが常時監視して異常があったらロボットが修復、ドローンで自動撮影した3次元画像を活用した建設支援システムなどを取り上げています。

smart_006_R(平成28年版科学技術白書より)

そして未来社会の共通項、言わば超スマート社会の輪郭として以下の3点を挙げています。

① 莫大なデータ量を背景に、従来のものづくりやエネルギー等の価値連鎖が、分野の枠を越えて相互に作用することで、あらゆる人に高度なサービスの提供が可能
② 危険な労働や肉体労働、専門的職業における作業支援等の代替が進み、創造的な仕事への注力が可能
③ 未来社会を可能とする鍵となる科学技術は、IoT、ビッグデータ、AI等普及するなど、産業の効率化

超スマート社会がもたらす変化

超スマート社会がもたらす経済的・社会的変化について、大きく「産業構造の変革」と「雇用環境の変革」の2点から述べています。

産業構造の変革では、データの収集・蓄積・利用が新たな付加価値の源泉であるとしてデータをもとにした産業のサービス化と、新たな市場・産業群の再編成をもたらすプラットフォーマーの台頭も挙げています。

smart_003_R(新産業構造部会の検討の背景とミッション平成27年9月経済産業政策局http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shin_sangyoukouzou/pdf/001_06_00.pdf より)

雇用環境の変革では、一時的な雇用調整が見込まれるが、新たな産業による雇用が創出されるとしています。そして危険労働における安全性が向上したり知的集約型の生産性が向上したりするほか、AIやロボットに代替されないコミュニケーション・創造的業務の重要性が高まるとしています。一方で、こうした社会の変化に対応できる能力・資質向上のための再教育制度や次世代を担う人材育成の重要性を指摘しています。超スマート社会で活躍できる人材の育成と確保については、第2章で詳しく述べています。そこには次のような人物像が示されています。

(1)最新技術に精通した人工知能技術者
(2)データサイエンティスト
(3)サイバーセキュリティ人材
(4)起業家マインドのある人材

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(平成28年版科学技術白書より)

超スマート社会に必要な情報通信技術を担える人材について、現在、日本のIT技術者は100万人程度でアメリカの3分の1、中国の2分の1の水準であること、また、人工知能に関する研究論文は、アメリカや中国の10分の1にとどまっているとして、「超スマート社会」に向けて、情報通信技術を担える人材の育成やプログラミング教育など大きな課題であるとしています。

 

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