宇宙活動法案

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宇宙活動法案

2016年3月4日に、閣法(※1)として内閣が「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律案」と「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律案」を国会に提出しました。

(※1)閣法とは、内閣が提出した法案、いわゆる内閣提出法律案のことです。

この法案は、一般には「宇宙活動法案」とも呼ばれるもので、これまで宇宙活動が宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心に国が担っていたのですが、アメリカなどではSpaceX社等複数のベンチャー企業が商業打上げ市場へ参入し、さらには再利活用できる安価なロケット打ち上げ技術の開発を進めるなどしている状況を鑑み、日本においても、民間がロケット打ち上げや商業衛星運用などの宇宙開発関連事業に参入しやすい環境をつくることをねらいとしています。

また「衛星リモートセンシング法案」は、解像度2~3メートルなどの詳細画像を対象に、商業衛星で得られた画像データが悪用の懸念のある国や国際テロリスト等の手に渡らないよう管理するための制度を整備することをねらいとしています。

「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律案」の概要

この法案の背景としては、前述のように「人工衛星及びロケットの小型化や低価格化によって民間企業の宇宙事業への参入障壁が下がったこと」。それにより、「海外受注の獲得等を通じて、我が国の宇宙産業基盤の持続性確保」し、さらに「我が国の民間の宇宙活動の進展により、新産業・サービスや雇用機会の創出」することがあるようです。

検討会の資料によれば、世界の宇宙機器産業は、年率7%以上で成長しており、2014年の商業打上受注数の約半数は、SpaceXとのことです。

ところで、この法案は、大きく「人工衛星等の打上げに係る許可制度」「人工衛星の管理に係る許可制度」「ロケット落下等損害及び人工衛星落下等損害の第三者損害賠償制度」の3つから構成されていると言えそうです。

(1)人工衛星等の打上げに係る許可制度

・飛行経路周辺の安全確保、宇宙諸条約の的確かつ円滑な実施等について事前審査

・ロケットの型式設計、打上げ施設の基準への適合性について事前認定制度を導入

・JAXAは、簡略化した手続きにより人工衛星等の打上げ用ロケットの型式認定及び打上げ施設の適合認定を受けることができるなど

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(http://www.cao.go.jp/houan/doc/190-3gaiyou.pdf より)

(2)人工衛星の管理に係る許可制度

・人工衛星の管理を許可制とし、宇宙諸条約の的確かつ円滑な実施、宇宙空間の有害な汚染等の防止、公共の安全の確保、再突入における着地点周辺の安全確保等について事前審査

・人工衛星管理者が事業譲渡や合併等を行った場合、認可によりその法的地位を引き継ぐことができることなど

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(http://www.cao.go.jp/houan/doc/190-3gaiyou.pdf より)

(3)ロケット落下等損害及び人工衛星落下等損害の第三者賠償制度

・人工衛星等の打上げに伴い地上で発生した第三者損害を無過失責任とするとともに、打上げ実施者に責任を集中し、人工衛星落下等損害は人工衛星の管理を行う者の無過失責任とする

・打上げ実施者に損害賠償担保措置の実施の義務を課すとともに、民間保険契約では埋めることのできないロケット落下等損害の賠償については政府が補償契約を締結できる制度を導入する

・人工衛星の管理に伴い地上で発生した第三者損害を無過失責任とする。

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(http://www.cao.go.jp/houan/doc/190-3gaiyou.pdf より)

民間による宇宙事業を進展させるうえでもっとも大きな障害となるのは、ロケットの打ち上げの失敗に伴う損害補償です。打ち上げに失敗すると、損害額が100億円を超えるとも言われています。これだけの金額を民間企業が支払うリスクを抱えて宇宙事業に参入するのはなかなか難しいことです。そこで、この法案では損害保険でも払いきれない損害については、国が補償するというわけです。

ところでアメリカでは30年以上も前のレーガン政権時代の1984年に、すでに「商業宇宙打ち上げ法(Commercial Space Launch Attivities Act)」を制定し、保険による賠償額を超える損害につき15億ドルまでを国家が補償すると定めているのです。フランスでは2008年に「宇宙活動法」を制定し、賠償額を超えた部分に関し、無制限に政府が国家補償を行うと定めています。イギリスは1986年に「宇宙活動法」を制定していますし、韓国も2005年に「宇宙開発振興法」2007年に「宇宙損害賠償法」を制定しています。

「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律案」の概要

地球の周りを飛んでいる人工衛星は、その目的によって「通信衛星・放送衛星」「GPS衛星」「リモートセンシンング衛星(地球観測衛星)」に分けられます。衛星リモートセンシング記録とは、人工衛星に搭載したセンサーにより地球表面を観測し、記録したもので、様々な情報が得られるため、農業、防災・減災、鉱物資源、社会インフラ整備・維持等の分野で新産業・ 新サービスが創出されることが期待されています。日本の衛星としては「ASNARO (2014年打上げ)」「だいち2号 (ALOS-2) (2014年打上げ)」「しずく (GCOM-W) (2012年打上げ)」などがあります。世界の衛星リモートセンシング記録録の市場規模は2013年時点で1500億円と言われており、今後10 年間で数倍に拡大するとされています。

この法案には次のようなことが定められています。

・衛星リモセン装置の使用を許可制とし、不正使用防止措置、申請受信設備以外の使用禁止、申請軌道以外での停止、使用終了時の措置等の義務

・衛星リモセン記録保有者は、特定取扱機関に適正な方法により行う場合等を除き、衛星リモセン記録を提供してはならない。

・衛星リモセン記録を取り扱う者は、記録の区分に従い、記録を適正に取り扱うことができる旨の内閣総理大臣の認定を受けることができる。

・内閣総理大臣は、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に支 障を及ぼすおそれがあると認める十分な理由があるときは、範囲及び期間を定めて、衛星リモセン記録の提供の禁止を命ずることができる

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(http://www.cao.go.jp/houan/doc/190-4gaiyou.pdf より)

 

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