日本のフィンテックの現状

fintech_005_R

出遅れた日本?

金融(Finance)とITのTechnologyを融合させ新たな価値を生み出すムーブメント、いわゆるFinTech(フィンテック)が今、大きなうねりとなっているようです。スマートフォンでの決済やレシートを撮影すれば自動的に家計簿が付けられたり、人工知能がわずか数分で融資を決定したり、人工知能が資産の運用をアドバイスしたり、これまでの既存の金融機関ではできなかった新しいビジネスが新興スタートアップによって提案され、消費者や投資家に受け入れられつつあります。

fintech_006_R (第2回 FinTechの課題と今後の方向性に関する検討会合(FinTech検討会合) 事務局説明資料 平成28年7月 経済産業省 より)

フィンテック関連の企業はどんどん増えており、FinTech版のグーグルやフェイスブックのような企業も誕生しつつあります。有名なところではPayPalかもしれません。PayPalが2015年に再上場した際の時価総額440億ドル、日本円でおよそ5兆円、そのあと株価の上昇で520億ドル、日本円で6兆円にもなった巨大企業です。三井住友フィナンシャルグループやみずほフィナンシャルグループが約6~7兆円ですから、それに匹敵する規模ということになります。 FinTechが注目されるようなったのは、スマートフォン、ライフログ、クラウド、AI(人工知能)、ブロックチェーンなどのテクノロジーの進歩もありますが、これまでの銀行のビジネスモデル(お金を集めて、利ザヤをとって貸す)が金利の大幅な低下(日本の場合はマイナス金利)によって、時代に合わなくなってきたこともあるようです。 世界では日に日に影響力を強めるFin Techスタートアップ企業ですが、日本においては、やや出遅れた感があるようです。そのため、金融庁では、我が国では先進的なFinTechベンチャー企業やベンチャーキャピタルの登場が実現していないとして、有識者による検討の場を設け、「FinTechエコシステム」の実現に向けた方策を検討する「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」を設置し、第1回の会議を5月に開催しています。金融庁では、日本のFinTechベンチャーを巡る環境について次のようにみているようです。

〇 学生や若手研究者、海外出身者らが我が国でFinTechベンチャーの起業を目指す動きは、限定的。

〇 技術コミュニティ(技術者、大学・研究機関等)と金融・ビジネス・コミュニティの関係構築は、発展途上。

〇 起業経験者や専門家等が関わりながら、アイデアを実際のビジネスと して孵化(インキュベーション)させ ていく循環が形成されていない。

〇 グローバルに展開するFinTech企 業が少ない。FinTechに関する国際的な連携やネットワークが弱い。

(「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」(第1回)事務局説明資料http://www.fsa.go.jp/singi/fintech_venture/siryou/20160516/03.pdf より)

経済産業省も2015年10月から「産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会)」を開催してきましたが、FinTechが経済社会に与えるインパクトやFinTechに関する課題、今後の政策の方向性等に関する総合的な報告・提言を取りまとめるため、「FinTechの課題と今後の方向性に関する検討会合(FinTech検討会合)」を7月1日に開催しています。そして近々、FinTechに関する総合的な報告・提言を取りまとめる予定のようです。

Fintech 100

フィンテックベンチャー投資企業のH2ベンチャーズおよび国際会計事務所大手のKPMGが共同で世界各国のフィンテック企業を分析したFintech 100が毎年発表され、2015年12月に2015年版が公表されました。Fintech 100は、世界中の実績のあるFintech企業上位50社とFintech新興企業50社で構成されており、今回目立ったのはFintech企業上位50社に中国企業が7社も入っており、しかも1位が中国の保険会社ZhongAn(衆安保険)であったことです。さらに4位にも中国のQufenqi.com(趣分期)という企業が入っています。この中国の7社という数はイギリスの6社よりも多いのです。また前年は1社しか入っていなかったとのことですから、中国のFinTech企業の躍進が目立ちます。残念ながら日本の企業はFintech企業上位50社にもFintech新興企業50社にも入っていません。

Fintech企業上位50社

fintech_002_R (FINTECH 100 Leading Global Fintech Innovators Report 2015 よりキビテク作成)

Fintech新興企業50社

fintech_003_R

(FINTECH 100 Leading Global Fintech Innovators Report 2015 よりキビテク作成)

Fintech新興企業50社では、イスラエルとオーストラリアの企業の多いのが目立っています。アジアからはシンガーポール2社、中国1社が上がっています。

アクセンチュアの見る日本のフィンテック

やや存在感の薄い日本ですが、アクセンチュアの発表では、2015年のフィンテック投資は、前年度20%増の6,500万ドルとなり、さらに日本においても、ベンチャーエコシステムを支える5つの要素が整いつつあり、活性化に向けて機は熟してきたと見ています。とはいっても、アメリカの122億ドルやイギリスの9.7億ドルと比較すると、まだ規模としては小さく、さらに、中国が455%、インド1,115%、豪州1,200%とフィンテック投資が伸びている中で日本の伸びは小さいと言わざるを得ないようです。

グローバルのフィンテック投資活動(2010年-2015年)

fintech_004_R

(アクセンチュア 「フィンテック、 発展する市場環境: 日本市場への示唆」https://www.accenture.com/t20160627T031500__w__/jp-ja/_acnmedia/Accenture/jp-ja/Documents/DotCom/Accenture-Fintech-Evolving-Landscape-jp-ver3.pdf より)

ところで、フィンテック・エコシステムを支える5つの要素とは、次の5つです。

金融機関:自らのイノベーションを目的とした、フィンテックの活用や投資の活性化 起業家:起業家の増加・集積による、起業家コミュニティーの活性化および情報・知見の蓄積 投資家:投資成功体験を通じたリスクマネー供給の増加、起業家の育成・経営指南 政府・行政による支援:規制緩和、起業支援等の環境整備・活性化に向けた政策 の実施 アクセラレータ:スタートアップの育成、事業化のサポートを生業とするプレー ヤー増加、関連プレーヤーの集積するハブの形成 (アクセンチュア 「フィンテック、 発展する市場環境: 日本市場への示唆」https://www.accenture.com/t20160627T031500__w__/jp-ja/_acnmedia/Accenture/jp-ja/Documents/DotCom/Accenture-Fintech-Evolving-Landscape-jp-ver3.pdf より)

日本の場合、この5つのうち「企業家」と「投資家」がフィンテック先進国などと比べてまだ発展途上の状態であると分析しています。そのうえで、活性化に向けた環境が整い機は熟してきたとして、今後はフィンテックスタートアップと金融機関による競争と協業によるイノベーションを生み出すことが求められるとしています。 「一般社団法人FinTech協会」も設立され、金融庁にはFinTechの相談窓口が設けられ、スタートアップからの相談を受け付ける体制も整いました。規制に縛られ「ガラパゴス化」になることのないよう、そして、個性的な金融サービスが生まれることが期待されています。

1件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です