ビッグデータと独占禁止法

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公正取引委員会報告書

公正取引委員会は2017年6月6日に「データと競争政策に関する検討会 報告書」を公表しました。報告書は「第1章 検討の背景」「第2章 データを巡る環境変化、利活用の現状」「第3章 競争政策上又は独占禁止法上の検討に当たっての基本的な考え方」「第4章 データの収集、利活用に関する行為」「第5章 企業結合審査におけるデータに関連する考慮事項等」からなっています。

マスコミでは、「ビッグデータの独占を独占禁止法で規制する方針が示された」と大きく取り上げています。このことについては、報告書では、「価値のあるデータが第三者から不当に収集されたり,又はデータが不当に囲い込まれたりすることによって,競争が妨げられるような事態を避けなければならない。」つまり、データを不当に集めたり、不当に囲い込んだりすることに対しては、独占禁止法で対応する必要があるということを述べています。そして、詳しく次のようにも述べています。

・・・・データが特定の事業者に集積される一方で、それ以外の事業者にとっては入手が困難となる結果として、当該データが効率化等の上で重要な地位を占める商品の市場における競争が制限されることとなったり、あるいは、競争の観点から不当な手段を用いてデータが利活用される結果、例えば、商品の市場などデータに関連する市場において競争が制限されることとなったりする場合には、独占禁止法による規制によって、競争を維持し、回復させる必要が生じることになる。

(公正取引委員会 競争政策研究センター 「データと競争政策に関する検討会 報告書」http://www.jftc.go.jp/cprc/conference/index.files/170606data01.pdf より)

データを巡る競争の現状については、デジタル・プラットフォームが、無料サービスなどによって大量の個人データを収集し、広告事業等に活用しているが、ネットワーク効果に加えて「データ→機械学習によるサービスの向上→更なるデータ増」の循環によって新規参入を更に困難にするおそれがあるとしています。また、産業データについては、データの「囲い込み」のおそれがあるとの指摘があることも挙げています。

antitrust_law_002_R(「データと競争政策に関する検討会」報告書(概要)http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h29/jun/170606_1.files/170606_02.pdf より)

無料サービスと独占禁止法

例えば、どんな場合が独占禁止法の検討対象になるのでしょうか?
報告書では「SNSや検索エンジンなどの「無料」サービスを消費者に提供しつつ、別途、広告主から受注したインターネット広告の配信も当該消費者に行う事業者」と表現していますが、フェイスブックやグーグルなどを念頭に置いて、SNSなど無料サービスについても「市場」として独占禁止法の検討対象とし得るとしています。

具体的には、「新規参入者が同様のデータを収集することは、経済的には現実的ではない」「利用者がサービスを停止することが困難なため不利益を甘受する可能性がある」「データのポータビリティが確保されないと市場支配力が維持されやすくなる」などいくつか指摘し、海外参考事例として、ドイツのカルテル庁が、Facebook社がユーザーの個人情報を収集している行為を、ソーシャルネットワーク市場における市場支配的地位の濫用であるとして調査されていることを挙げています。

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(公正取引委員会 競争政策研究センター 「データと競争政策に関する検討会 報告書」http://www.jftc.go.jp/cprc/conference/index.files/170606data01.pdf より)

不当なデータ収集・データ囲い込み

不当なデータの収集の例としては、優越的地位にある事業者などが,業務提携等に伴い取引先企業から一方的にデータ提供を求めることやデジタル・プラットフォーム事業において、利用者が他の類似サービスへの切替えが困難となっている場合に、我が国法令等に照らし不当な行為により個人データを収集することなどが挙げています。

我が国法令等に照らし不当な行為とはやや抽象的ですが、例えば、あるサービスを利用するにあたって、性別と年齢だけの情報を求められていたものが、あとになって追加で好みや住所、電話番号などの情報提供を求めるような場合が想定されます。

その他、複数の事業者による共同収集する場合においては、データによって、競争者間における協調的行為の促進を生じさせる場合、商品の品質が等質化され競争が制限される場合なども検討対象の例としています。

データの囲い込みの例としては、競争者や顧客によるアクセスを正当な理由なく認めず、競争者等を締め出し排除することとなる場合で、排除行為としては,「排他的取引」、「抱き合わせ」、「供給拒絶(取引拒絶)」、「差別的取扱い」等が挙げられます。

こうした事例としては、2004年に欧州委員会が、マイクロソフト社がサーバー用OS市場において競争関係にある事業者に対し、従来開示していたウィンドウズPCとの相互接続を可能とするインターフェイス情報の開示を拒絶したことに対して開示するように命じた例などを挙げています。

また、従来は問題にならなかった企業統合でも、例えば、自動車メーカーと自動運転の人工知能を開発する会社、走行データを集める会社が統合した場合はデータの囲い込みに当たる可能性があるようです。

この大量のデータの集積を伴う企業結合については、データの囲い込みだけでなく、AI技術や商品における競争の低下、データ市場における競争減殺効果(※1)という観点からも独占禁止法の審査の対象になるとしています。なお、データの蓄積・収集にかかる諸外国における企業結合の事例として、Google/Double Click事案やFacebook/WhatsAppの結合の事案など6事例が別紙資料として添付されています。

(※1)減殺(げんさい)とは、減らしそぐ、少なくするという意味です。競争減殺はライバルが手を組んだり、ライバルを排除したりすることで生じます。

 

 

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