バーチャルスラム

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バーチャルスラム

2017年1月7日の朝日新聞に「広がるAI 期待とリスク」と題する特集記事が掲載されていました。その中に、12月20日の総務省の研究会で報告された「AIが個人の能力や信用力を判断し、人生を左右する世界を描くシナリオ」が取り上げられていました。

それは「社員の採用にAIを導入するY社にエントリーシートを送付したが不採用。さらに、信用力の判断にAIを導入する銀行に、起業しようと融資を申し入れたが断られた。そうしてAIを導入する組織から排除され孤立を深めていると、うつ状態ですというメッセージが届く」という内容です。詳しいシナリオは、総務省の「AIネットワーク社会推進会議 環境整備分科会・影響評価分科会 合同分科会(第2回)資料「憲法調和的なAI社会は可能か?」慶應義塾大学法科大学院教授 山本龍彦」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000520417.pdf)に掲載されています。

こうしたAIの予測する確率的な判断、ビッグデータを活用したスコアリングあるいはプロファイリングによって人生に烙印を押され、そこからはい出せなくなり、新たな被差別集団が形成されるというシナリオは、バーチャルスラムと呼ばれています。

「ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える」の著者ビクター・マイヤー=ショーンベルガー氏は「確率という名の牢獄」とよんでいるようです。

同じようにピッグデータをデータマイニングし、さまざまな身体的・心理的・社会的な性質が点数化された社会をメリーランド大学の法学者であるCitronとPasqualは「Scored Society」と呼んでいます。一見客観的根拠に基づいているように見えながら、点数が低いことで危害を受ける可能性があり、アルゴリズムやメカニズムが秘密であるため、一旦押された烙印は修正が困難になる可能性を秘めている社会です。

採用選考とAIの事例

AIを使った採用業務は、いわゆる「ヒューマン・リソース・テック(Human Resource Tech)」といわれるものの一つです。HRTechには、他にも人事評価や育成、配置などで活用されています。

企業の採用にAIを使うのは、コストということもあるかもしれませんが、採用者のバイアスを補正し有用な人材の見落としを防ぐということもあります。

〇 GROW

GROWは、Institution for a Global Society(IGS)が開発したサービスです。学生の気づいていないコンピテンシー(能力、適性)、気質などを科学的に測定し、潜在能力や学生時代の成長で企業との適合率算出する採用人事サポートするもので、企業側が重視するコンピテンシーとの適合率の高い学生を企業側に推薦する仕組みになっています。

1990年代終わりに、アメリカのGreenwald、McGhee、Schwartzらによって開発された「潜在連合テスト(IAT: Implicit Association Test)」という潜在的態度(Implicit Attitude)を測定するための技法がもとになっています。

ANA(全日本空輸)、RIZAP、朝日新聞など、企業や機関で導入するところが増えているようです。

〇 NRIのAIソリューション「TRAINA/トレイナ」

サッポロホールディングス(HD)は2019年入社の新卒採用における書類選考に、NRI(野村総合研究所)のAIソリューション「TRAINA/トレイナ」を用いたAI判定を導入することを2017年10月に発表しています。報道によれば、履歴書などを提出したエントリー者から面接などに進む人を選考する作業でAIを活用するそうです。これによって、書類選考にかかっていた約600時間を4割削減できるとのことです。その分を合格者の面接などに活用し、じっくり適性や才能などを調べられるということのようです。

〇 IBMの「ワトソン」

ソフトバンクは総合職の採用志望者が提出するエントリーシートの評価にIBMの「ワトソン」を活用すると発表した。これによってントリーシートの確認に割いていた時間を75%程度削減できるとのことで、その分は面談など対面での採用活動に充てるそうです。

評価するのはエントリーシートの中で自己の強みやその強みに関連するエピソードを問う項目で、将来的には項目を増やしたり、一般職の採用などにも使うとのことです。。

〇 NECのAIシステム「RAPID機械学習」

過去に入社試験を受けた約2000人分の履歴書データと採用の合否結果をシステムに入力すると、AIがその企業がどんな人材を採用してきたかを学習し、そのデータを基に適切な人材を選び出すというものです。

顧客企業と求職者をマッチングするために人材紹介会社などで導入しているところもあるようです。

〇 「SHaiN」(シャイン)

タレントアンドアセスメントが2017年8月にリリースしたAIを活用した採用面接サービスです。

音声認識機能を備えており、例えば、音声で読み上げられた質問に対して受験者が口頭で回答するということが可能です。「自主独立性」「バイタリティー」「柔軟性」「ストレス耐性」など、11項目の資質を分析します。

〇 独SAP社が提供する「Resume Matching」

Resume Matchingに過去の採用に係わるデータ(希望者の職歴、合否など)を読み込ませることで、募集中の職種に対して送られてきた多数のレジュメを、応募者の能力・適性順にランク付けしてくれるというものです。人事担当者は、多数の応募者の中からAIがランク付けした上位の者だけを審査すればよいと言わけです。

〇 HireVue

HireVueは、入社志願者がスマホやパソコンからWeb上でAIとビデオ面接することで、、各候補者の比較や評価を行うデジタル面接プラットフォームです。AIは面接者が使う言葉や声の抑揚、しぐさ、表情など、言葉(TEXT)、音声(AUDIO)、態度(VIDEO)のパターンを分析し選考の判断します。

個人の信用力とAIの事例

〇 AIスコア・レンディング

みずほ銀行とソフトバンクが設立した合弁会社「J.Score」が2017年9月から「AIスコア・レンディング」というサービスを始めました。利用者自身のさまざまなデータをAI技術を活用してスコア化し、そのAIスコアをもとに、それぞれの利用者にふさわしい条件を提示してレンディングを行うサービスです。

(※)レンディング

株や債券などの保有有価証券を証券会社等に貸し付け、品貸料を徴収することを言う。同取引を利用する場合には、貸付先の信用リスク管理や保全方法などに留意する必要がある。(MUFG用語解説http://www.tr.mufg.jp/houjin/jutaku/yougo_kensaku/kaisetsu/ja_re/ja_re_003.html より)

〇 芝麻信用

芝麻信用は、アリババの決済サービス・アリペイの支払い履歴や交友関係などをもとにしたサービスです。「芝麻」は日本語で「胡麻(ゴマ)」のことだそうです。

利用者の信用力を950点満点で評価し、スコアは年齢や学歴・職歴などの「身分特質」、資産などの「履約能力」、取引履行記録の「信用歴史」、他者への影響力や友人の信用状況の「人脈関係」、ショッピングや支払い、振り込みなどの「行為偏好」の5項目で算出されます。

芝麻信用のスコアは、住居の賃貸や融資、企業の採用にも影響があるほか、スコアが高いといろいろなサービスの保証金が免除されたり一部の国で個人観光ビザがとりやすいなどの特典が受けられます。

〇 日立製作所の「Hitachi AI Technology/H」(AT/H)を利用したローン審査

住信SBIネット銀行と日立製作所のAI(Hitachi AI Technology/H)を活用し、年齢や収入などのデータに加え、地域別の経済指標などの外部データを含めてAIで分析するというシステムです。

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