デジタル化とアメリカの労働力

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ブルッキングス研究所

シンクタンク(think tank)は、政策立案や政策提言などを行う研究機関で、世界にはおよそ6600ほどあるようです。その始まりは、1910年設立のカーネギー国際平和基金とされています。世界に数多くあるシンクタンク中でも評価の高いシンクタンクとしては、ブルッキングス研究所(ワシントン)、王立国際問題研究所(ロンドン)、カーネギー国際平和基金(ワシントン)、戦略国際問題研究所(ワシントン)、ブリューゲル(ブリュッセル)ストックホルム国際平和研究所(ストックホルム)、ランド研究所(サンタモニカ)などがあります。
アメリカのペンシルバニア大学のTTCSP(シンクタンク・市民社会プログラム)では、毎年世界の有力シンクタンクの評価報告書を発表しています。2017年1月26日に発表された「2016世界シンクタンク報告」では下図のようなっています。日本では、公益財団法人日本国際問題研究所の15位が最高です。

thinktanks_001_R(2016 Global Go To Think Tank Index Report  https://repository.upenn.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1011&context=think_tanks より)

このランキングで毎年トップになっているのがアメリカの「ブルッキングス研究所(The Brookings Institution)」です。「ブルッキングス研究所」は、1916年にロバート・S・ブルッキングスによって創設され中道・リベラル系のシンクタンクとされています。
そのブルッキングス研究所は2017年11月に「デジタル化とアメリカの労働力(Digitalization and the American workforce)」と題するおよそ60ページのレポートを発表しています。

デジタル化とアメリカの労働力

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このレポートは、政府のデータを基に全業種のアメリカの労働者の90%を占める545職種のデジタルコンテンツが2001年以来どのように変化したかを詳細に分析したものです。

まず、各職種のデジタル化スコアを100点満点で表し、それぞれのDigital levelを、60点以上をHigh、34〜59点をMedium、33点以下をLowとして3つのグループに分別しています。

Highグループに属するのは、Software developers(94点)、Financial Managers (61点)などです。Mediumグループに属するのは、弁護士(58点)、Registered nurses (55点)、自動車技術者(55点)など、Lowグループに属するのは、レストランのシェフ(18点)、建設労働者(17点)、在宅介護助手(14点)などです。

〇 雇用の変化と賃金

こうしたデジタルスキルを必要とする職業とそうでない職業での雇用の変化ついては、2002年では、あまりデジタルスキルを必要としない職業での雇用が56%を占めていましたが、2016年には30%まで低下しています。逆に、高度なデジタルスキルを必要とする雇用は2002年にはわずか5%でしたが、2016年には23%までに伸びています。

デジタルスキルのレベルによる平均年間賃金の比較も報告書には述べられています。それによると、Highレベルデジタル職業の平均賃金は2016年に72,896ドルですが、Mediumレベルでは48,274ドル、Lowレベルだと30,393ドルとなっています。当然と言えば当然のかもしれませんが、賃金に2倍以上の開きがある現実は、スキル不足によって職業選択の幅が限定される労働者には厳しいものかもしれません。

〇 賃金の伸び

また、下図は賃金の伸び率を示したものです。Highレベルデジタル職業はどの職業も賃金が大きく伸びているの対して、Mediumレベルの賃金が伸び悩んでいます。職種によっては逆に賃金が下がっています。日本でも介護関係の低賃金が問題になっていますが、アメリカでも「Personal Care and Service」の賃金が大きく下がっています。

thinktanks_004_R(Digitalization and the American workforce  https://www.brookings.edu/wp-content/uploads/2017/11/mpp_2017nov15_digitalization_full_report.pdf より)

〇 自動化技術と雇用への影響

雇用の伸びは、Highレベルグループのコンピュータ・数学やビジネス・ファイナンス、Lowレベルグループのパーソナル・ケアや食品調理関連サービスなどで伸びていて、中間レベルがあまり伸びていないようです。
IT技術の進展は、高賃金層と低賃金層の雇用が増大し、中間層が低下するということが言われています。中間所得層がITにとって代わられ、低所得のサービス業にシフトしていくというわけです。報告書はそのことを示しているのかもしれません。

また、最近よく話題になるロボット・AIが人間から仕事を奪うということに関しては、下図のような自動化技術の影響について示しています。
これによれば、Lowレベルグループでは仕事のおよそ60%、Highレベルグループではおよそ30%が自動化技術の影響を受ける可能性があるとしています。しかし、ロボットに仕事を奪われるという前に、個人のデジタルスキルが一定の水準に達しているかどうかが差し迫った雇用に関わってくるようです。

thinktanks_005_R(Digitalization and the American workforce  https://www.brookings.edu/wp-content/uploads/2017/11/mpp_2017nov15_digitalization_full_report.pdf より)

(「The Brookings Institution」:Digitalization and the American workforce  https://www.brookings.edu/wp-content/uploads/2017/11/mpp_2017nov15_digitalization_full_report.pdf 参照)

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