ギグ・エコノミー(gig economy)

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ギグ・エコノミー(gig economy)

ギグ(gig)は、もともとはジャズやロックなどの音楽シーンで使われるスラッグ(俗語)で、演奏する場所ごとにその都度契約して演奏する形態で、いわばその場限りの単発の演奏(仕事)のことです。この言葉がシェアリングエコノミーにおいて、その働き方の形態を指す言葉として2015年頃から使われるようになってきました。

ですので、シェアリングエコノミーでのギグは、非正規の労働で、インターネットなどを通して一回一回仕事を請け負う就業形態と言えます。配車サービスのUBER(ウーバー)、宿泊施設仲介のAirbnb(エアビーアンドビー)、便利屋サービスのTaskRabbit(タスクラビット)などが代表的なものです。

gigu_002_R(シェアリングエコノミー検討会議検討の経過整理 平成28年8月31日 内閣官房IT総合戦略室 より)

ギグ・エコノミーのメリット

こうした働き方は、組織に縛られずに自分の専門能力が生かせる、コストの引き下げが図れる、遊休資産を活用して稼げる、フルタイムで働けない人や定年後の人でも都合のいい時間に柔軟に働けるといったメリットがあります。

2016年11月に内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室の「シェアリングエコノミー検討会議」が出した中間報告書「シェアリングエコノミー推進プログラム」では、シェアリングエコノミーの発展で期待される効果として、大きく6つのこと挙げていますが、その文言の中で「働き方」については、次のようなメリットが示してあります。

〇個人の所得の増大
〇兼業禁止規定の見直し等、国民の働き方改革
〇ライフスタイルの変革
〇過剰消費と使い捨て文化に替わる新たなライフスタイル
〇地域における共助の仕組みの充実

gigu_003_R(シェアリングエコノミー検討会議 中間報告書 -シェアリングエコノミー推進プログラム-
2016 年11 月 シェアリングエコノミー検討会議 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 より)

ギグ・エコノミーのデメリット

シェアリングエコノミーにおける働き方のメリットがこのように様々挙げられる反面、社会保険や労災保険、退職金などの待遇・労働環境等が不安定であるとか、個人の能力によって所得格差が大きくなるといったデメリットも指摘されています。

また、ギグ・エコノミーでは、事業主(サービスを提供する個人)と消費者(サービスを受ける個人)はプラットフォームを介して取引をしますので、シェア事業者とサービス提供者の間には、雇用者と労働者という雇用関係がないとする考えがある一方で、サービス提供者は、プラットフォームの規則に従う必要があり、利益の配分もシェア事業者に委ねられているという、双方の関係のあいまいさがあります。このあいまいさが、Uberドライバーがその地位をめぐって、未払い給与および補償の復活、経費の精算、チップの支払いなどを求めた集団訴訟の要因にもなったようです。

Uberの訴訟の論点は、ドライバーを従業員とみるか、独立契約者とみるかということです。従業員とすれば、最低賃金が保証され、社会保障のメリットもうけられますが、自分の意思による自由な働きはできません。独立契約者であれば、最低賃金や社会保障は受けられませんが、自分の意志による自由な働き方ができます。

ところで、プラットフォームを提供するシェア事業者とサービスを提供する個人との関係について、2016年6月に発表されたシェアリングエコノミーに向けた欧州アジェンダでは、「両者に雇用関係が存在するかどうかは両者の関係を特徴づける事実、関係する仕事のパフォーマンス、特に従属関係の存在、仕事の性質、報酬の存在などを考慮して立証されなければならない」としています。

従属の関係とは、サービスの提供者がどのサービスをどのように提供するかを自由に選択できるのかできないのかといったような関係です。仕事の性質とは、短い期間、限定された労働時間、「非連続的な労働、低い生産性といったことだけでは雇用関係を排除できないが、頻繁にサービスを提供する場合は労働者又は自営業者の可能性はあるとしています。また、報酬については、提供者が報酬を受け取らないか、提供者が活動するために負担した経費の補填のみを受け取る場合は報酬の機銃は満たさないとしています。

デジタル搾取とプラットフォームコーポラティビズム

空いた時間に小遣い稼ぎという自由な生き方は魅力的ですが、実際には手数料を引かれるなどしてわずかしか手元に残らない。配車サービスの場合、ガソリン代、修理代、保険料などの車の維持費や購入費などを入れると、それだけで生活するのは苦しい。こうした現実から、このようなビジネスをdigital sweatshop(デジタル搾取工場)と呼ぶこともあるようです。さらに、ギグ・エコノミーを本業とする人が増えてくると、労働関連の権利保障、社会保険・労災保険、退職⾦などの様々な問題が社会問題化してきます。

そこで、近年こうした状況を打開するために「プラットフォームコーポラティビズム(platform cooperativism)」という考えが提唱されているそうです。それは次のような考え方です。

「普通の⼈々が他の普通の⼈々にサービスを提供する会社は、寄与する全ての関係者によって共同経営されるべき」
(シェアリングシティとデータ活⽤について 庄司昌彦shoji@glocom.ac.jp 国際⼤学GLOCOM主任研究員・准教授 http://www.vled.or.jp/symposium2016/2016/docs/sympo_05.pdf<?cite> より)

シェアリングエコノミーは新たなビジネスモデルとして期待される一方で、利益が巨大企業に集中し、公平な分配になっていないのではないかという現状認識が「プラットフォームコーポラティビズム(platform cooperativism)」となっ起きてきているのかもしれません。

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