オープンイノベーション白書

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オープン・イノベーション

最近、これから企業に求められる取り組みとしてオープン・イノベーションが注目されているようです。ハッカソンやアイデアソンが盛んになってきたのもそうしたことの表れなのかもしれません。

このオープン・イノベーションを最初に提唱したのはヘンリー・チェスブロー氏と言われています。氏は2003年に出版した「オープン・イノベーション:邦訳『OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて』産能大学出版部」という本を出版しています。氏はその中で「オープン・イノベーションとは、テクノロジーを進化させようとする企業は、社内と社外の両方からアイデアを募り、社内と社外の両方で市場化の道を模索できるしそうすべきであるという考えに基づいたパラダイムである」と述べています。氏はその後も2006年に「オープン・ビジネスモデル」、2011年に「オープン・サービス・イノベーション」という本を著しています。

ヘンリー・チェスブロー氏は、世界で最も影響力のある経営思想家を選ぶ「Thinkers 50(2年に一度発表)」にも選ばれています。2011年に初めて選ばれたときは37位でしたが、2015年には24位と、オープン・イノベーションへの関心の高まりとともにそのランクも上がっているようです。
ちなみに、2015年の1位はマイケル・E・ポーター氏で、氏はビジネスモデルを使い社会問題を解決すること、それにより社会的価値と経済的価値を同時に創造するというCSV(Creating Chared Value)経営を提唱しています。2013年と2011年は「イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」の著者である クレイトン・クリステンセン氏でした。

オープンイノベーション白書

オープンイノベーションが注目されつつある中、NEDOとオープンイノベーション協議会が、日本のオープンイノベーションの取り組みの現状を可視化し、広く共有することを目的に、「オープンイノベーション白書」を後悔しました。
本書はおよそ300ページからなり、下図のように7つの章で構成されています。

open_innovation_001_R(オープンイノベーション白書(概要版)より)

第1章のオープンイノベーション(OI)の定義と変遷では、イノベーションを10タイプに分類し、最終的な製品である提供物(offering)だけでなく、ビジネスモデル、サービス提供プラットフォームの構築から顧客体験を含めたイノベーションであるTen Types of Innovationについやオープンイノベーション創出の手法を「インバウンド型「アウトバウンド型」「連携型」の3つに分けてオープンイノベーション創出方法の成熟度などについて述べられています。また、オープンイノベーション1.0と2.0について比較しながら、欧州各地において地域のエコシステムとして機能するLiving Labsを連携させることによるマッチング機会の創出をオープンイノベーション2.0の具体的な取り組みとして述べています。

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(オープンイノベーション白書より)

第2章データに見る国内のオープンイノベーションの現状では、我が国全体としての研究費と研究人材の流動化の状況、大学・公的機関に関するデータ(研究費、知財活用、人的交流、資金の流れ、大学発ベンチャー、外部連携の活発化状況)、研究開発における外部との連携割合、外部連携の活発化状況と自社の研究開発の関係、研究開発費の社外への業種別支出動向などについてデータを示しながら分析を行っています。少々気になったデータとしては大学発ベンチャー近年横ばい傾向であるということです。

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(オープンイノベーション白書より)

第3章我が国のオープンイノベーションの課題・阻害要因では、初めに大企業におけるオープンイノベーションの課題・阻害要因を次のように示しています。

Ⅰ オープンイノベーションの目的に対する理解
Ⅱ オープンイノベーションに取り組むための組織体制の構築
Ⅲ 外部から獲得すべき経営資源又は外部で活用すべき経営資源の把握
Ⅳ 連携先の探索
Ⅴ 連携先との関係構築

さらに10年前と比べてオープンイノベーションが活発化している企業とそうでない企業の特徴を比較しながら、例えば、「事業部を巻き込んだ新規テーマの設定ができていない」「外部連携の判断基準が不明確/偏っている」「スピンオフに対する支援がない」「専門組織がない」「外部連携先の探索を従来の手段に頼ている」「予算、意思決定プロセス、人材などの体制が整備されていない」などの要因を挙げています。また、活発化状況から見た課題・阻害要因では、「マインド面での遅れ」を指摘しています。

第4章オープンイノベーションを創出するエコシステムの国際比較では、シリコンバレー、国主導でエコシステムを構築したイスラエル、「フラウンホーファー」モデルに見る産学連携型のドイツ、先進事例に学びエコシステム構築に動くオーストラリアなどの事例を紹介しています。

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(The Global Innovation Index 2015 Effective Innovation Policies for Development より)

第5章オープンイノベーション推進事例では、国内企業、海外企業、政府・公的機関などの事例を紹介しています。取り上げられた日本企業は、大阪ガス、オリンパス、KDDI、小松製作所、セコム、ソフトバンク、東京急行電鉄、東レ、トヨタ自動車、ニトリ、富士フイルムなどです。

例えば、オリンパスの場合は自社技術の一部をオープンにするOPC Hack & Make Projectが取り上げられています。KDDIの場合は、シード段階ベンチャーを対象としたアクセラレータープログラム「KDDI∞Labo」やアーリー・ミドルステージ向けのマイノリティ出資を行う「KDDI OpenInnovation Fund」が取り上げられています。海外では、グーグル、」サムスン、デュポン、P&G、フィリップスなどの取組みが紹介されています。例えば、P&Gでは製品開発上の技術ニーズを公開し、広く技術シーズを募集するサイト「コネクト・アンド・デベロップ(C+D)」などが取り上げられています。

第6章各主体の取組から見るオープンイノベーション成功要因の分析では、オープンイノベーションの取り組みを成功に導く要因を①戦略・ビジョン等の組織構造上の要素、②外部とつながるための組織のオペレーション、③文化・風土といったソフト面の要素に区分しています。

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(オープンイノベーション白書(概要版)より)

本書は「はじめに」で、「変化の激しい競争環境の中で、自社のリソースのみでイノベーションを起すことはもはや不可能」と断言し、続けて「オープンイノベーションは、実践しなければ生き残れない必須の戦略」と述べています。そして、ゆっくり待っている時間はないと、動きの遅い日本企業への喚起を促しているようにも感じます。

 

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