オンデマンドエコノミーと雇用

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オンデマンドエコノミー(OnDemand Economy)

NHKの「クローズアップ現代」で、「“仕事がない世界”がやってくる」と題して「オンデマンドエコノミー」を取り上げていました。オンデマンドエコノミーとは、オンディマンド・サービス(OnDemand Service)を提供するビジネスで、必要なときに、必要な商品やサービスを、必要な場所に届ける、需要に応じたサービスです。テレビではこうしたIT技術を使った新たなサービスによって仕事が奪われていると抗議するタクシー業者の様子や、企業資産8兆円とも言われるUberと片や破産申請をしたタクシー会社の様子も紹介されていました。

オンデマンドエコノミーで収入を得たことがある人は全米で4500万人いるとのことですが、そうした仕事もAIによって機械に奪われていくと専門家は指摘していました。事実、Uber は自動運転の技術を研究して、1年前にはカーネギーメロン大学と戦略的パートナーシップを結び、自動車の研究施設としてUber Advanced Technologies Center(UATC)を設立することを発表します。また、オンデマンドエコノミーには新しい可能性がある反面、生産性の向上が格差を広げることにもなるとの指摘もありました。

番組では、スウェーデンの給料を下げることなく勤務時間を8時間から6時間に減らし雇用を増やしながらも利益を上昇させている企業の取組や、スイスでの「国や自治体などが全ての人に最低限の生活費を支給するベーシックインカム」の導入を求める運動などを紹介していました。

デカップリング

AIやロボットなどテクノロジーの進化によって、機械が人間の仕事を奪ってくということはよく言われていることで、将来の雇用に関する予測が様々な研究機関から出されています。

下図はアメリカの生産性の伸びと雇用者数の伸びを示したものです。2000年以降、生産性は伸び続けているのに、雇用は伸びていません。こうした現象を「グレート・デカップリング」と呼ぶこともあるそうです。デカップリングとはカップリングしなくなった現象、つまり、それまで連動していたものが連動しなくなったというような意味です。2000年ぐらいまでは、生産性の伸びも雇用の伸びも連動していたのに、2000年以降は連動しなくなったというわけです。

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(http://jp.wsj.com/articles/SB12081608772373954249104580484940176525722 より)

雇用だけではありません。生産性と賃金の伸びの間にもこのようなデカップリングが見られるとの指摘があります。「機械との競争」の著者(共著)であるMITのアンドリュー・マカフィー氏は、ハーバード・ビジネス・レビュー(「The Great ecoupling: An Interview with Erik Brynjolfsson and Andrew McAfee」)の記事で、

「テクノロジーが進歩しても、それでみんなが分け合える富のパイそのものが拡大するという経済原理はない。ましてや全員が、等しくその恩恵に浴するということが保証されているわけではない」

(Market Hack 2015年06月03日http://markethack.net/archives/51968283.html より)

として、下図をしめしています。

灰色は労働生産性です。緑は雇用、青は家計収入です。生産性は上昇しているのに家計収入は下降気味です。

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(https://hbr.org/2015/06/the-great-decoupling より)

Uberization(ウーバリゼーション)

数多く誕生しているオンデマンドサービスの中で特に注目されているのは、オンデマンドサービスの元祖のような「Airbnb」と、クローズアップ現代でも取り上げていた配車サービス「Uber Technologies」でしょう。中でもUberは「Uberization(ウーバリゼーション)」という言葉があり、また、トラブルも多きことでも注目されているようです。同様の配車サービスを展開する企業にLyftもあります。UberにはGoogleやMicrosoft、百度、Tata Capitalなどが投資していますし、Lyftには楽天も投資しています。アメリカではUberの運転手が16万人いて14%が女性とのことです。世界55カ国300都市でサービスを展開していますが、既存のタクシー業界との摩擦や運転手は社員なのかどうかで訴訟騒ぎも数多く起きているようです。日本では法規制等の関係で、MKタクシーとUberの仕組みを使ったハイヤーやタクシーの配車サービスを展開しているに留まっています。

Airbnbは自宅の余ったスペースを宿泊場所として貸し出すサービスです。世界最大のヒルトングループ以上の貸し出し部屋数を確保しているそうです。Airbnbの企業資産は約3兆円と推定されています。これは日本企業ではパナソニック、三井物産などと同等の規模です。ちなみにUberの8兆円はKDDIやホンダなどと同規模です。また、生産性の効率という点でAirbnbを見ると、同等の企業資産であるパナソニックは従業員数が約25万人、正社員が約7万人、ヒルトングループの正社員は約13万人と言われているのに対して、Airbnbの正社員は僅か800人です。Uberは約 2,000 名の社員と 16 万の契約社員とされています。

オンデマンドエコノミーが雇用の創出に結びつかないという批判もこうした点からも言われているのかもしれません。

 

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