「新たな成長戦略」にみるIoT

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新たな成長戦略「『日本再興戦略』改訂2015-未来への投資・生産性革命-」

政府は2015年6月30日に、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太の方針)と新たな成長戦略「『日本再興戦略』改訂2015-未来への投資・生産性革命-」を閣議決定しました。

成長戦略では、サブタイトルに示したように、技術や人材を含めた「未来投資による生産性革命の実現」を目指す方針を打ち出しました。加えて、雇用の7割を占めるサービス業の生産性向上、イノベーション(技術革新)の促進策、IT・ロボットによる産業構造改革、女性や若者など多様な人材の育成・活用などを掲げ、さらにイノベーションやベンチャーを創出する環境整備に向け、海外有力大学と競う「特定研究大学(仮称)」など新たな大学・大学院制度や日本年金機構の情報流出問題を受けた情報セキュリティーの強化なども掲げています。

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(「『日本再興戦略』改訂2015」総論概要 より)

IoT・ビッグデータ・人工知能時代の到来に出遅れ気味の日本

日本のIoTを取り巻く状況について、諸外国と比較して出遅れているととらえています。総論の「新時代への挑戦を加速する」の中の「迫り来る変革への挑戦(「第四次産業革命」)」では、現在の世界の状況を、ビジネスや社会の在り方そのものを根底から揺るがす、「第四次産業革命」が進行し、着実にIoT・ビッグデータ・人工知能時代が到来しつつあると捉え、その上で、世界のデータ量が2年ごとに倍増し、人工知能が非連続的な進化を遂げる中、今後数年間で社会の様相が激変したしても不思議はなく、こうした事態に手をこまねいていると、日本の企業や産業は短期間のうちに競争力を失い、熟練人材の知識や技能と言った価値は陳腐化すると危機感を表しています。

一方でこうした大きな変化はチャンスでもあり、スピード感ある大胆な挑戦に踏み切るかどうかが勝敗を分ける鍵となると述べています。そして、今進みつつあるIoT・ビッグデータ・人工知能による変革に出遅れがちの我が国には、試行錯誤をしている余裕はなく、時機を失うことなく的確な投資を行うとともに、官民で共有できるビジョンが必要であり、情報関連技術の革新による社会構造や産業構造の変化への対応、人材育成、ルールの整備などを時間軸を明確にして早急に対応を検討していく必要があるとしています。

IoT・ビッグデータ・人工知能等による産業構造・就業構造の変革

成長戦略では、わざわざIoTに関連した項を設け、冒頭でIoT・ビッグデータ・人工知能等がもたらす産業構造・就業構造の変革の動きに遅れをとることのないよう、産学官の幅広い連携、新たなビジネスモデル等への対応、ITを活用した産業競争力の強化、人材育成やセキュリティ対策などに取り組むことや中長期的な観点から、未来社会を見据えた研究開発や基盤技術の強化を進める必要を強調し、具体的な施策を述べています。

〇「CPS推進協議会(仮称)の創設

例えば、「ITを活用した産業の競争力の強化」の中では、産学官連携による推進体制の構築(「CPS推進協議会(仮称)の創設」を掲げ、同協議会において、幅広い分野でのビジネスモデルの実証を行い、分野横断的なルール整備を行うとしています。具体的には、ビッグデータを活用した新たなビジネスモデルの創出等に向け、企業間データ連携・共有を促進するための標準契約モデルの策定やビッグデータを活用したビジネスモデルに係る国際標準化を戦略的に進めること、データを核とした国内外のビジネスモデルの変革に関する最新状況の調査分析等に係る中核的機能(日本版ACATECH※(仮称))の確立等を推進するとしています。また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、リーディングプロジェクトの推進と新産業・新サービスの創出の促進を挙げています。具体的には

・ 2020年に日本の最先端の科学技術を世界に発信するための9つの実用化プロジェクト

自動走行技術は近未来技術実証に関する取組等と併せて、ロボット新戦略と連動し制度改革を進める。

・ 小型無人機については近未来技術実証を速やかに行うとともに運航方法の規制については、速やかに必要な法案を取りまとめる。

・ 宇宙インフラと地理空間情報(G空間情報)を高度に活用し、IoT・ビッグデータ等と組み合わせ、災害・緊急対応の高度化、農機・建機の自動運転、老人・子供の見守りサービス、高度道路交通システム等の実証・実装を進める。

・ 民間事業者の宇宙関連ビジネスへの参入促進のための関連法制度の整備を行う。

などを挙げています。

〇未来社会を見据えた共通基盤技術等の強化

IoT、ビッグデータ解析、人工知能、センサー、素材、ナノテク等に関して、重点的に取り組むべき課題等やその推進方策を本年度中に取りまとめ、来年度から研究開発等を実施するとしています。さらに、人工知能や情報処理技術、高性能デバイス、ネットワーク技術、電波利用技術等については、世界最先端の技術・知見を我が国に集積するためのコアテクノロジーの確立及び社会実装を推進するとしています。

〇スマートIoT推進協議会(仮称)の創設

自律型走行車、小型無人機も含めたICTシステムの高精度かつセキュアな制御を可能とする共通的なICTプラットフォーム技術等の確立や先進的な社会実証を推進するためスマートIoT推進協議会(仮称)を創設し、2018年度までに必要な技術を確立し、更に社会実証を推進するとしています。

〇未来社会を支える情報通信環境整備

① 移動通信システム用の周波数帯の拡張を2018年度までに実現するとともに、IoTや小型無人機等のための新たな電波利用システムに使用可能な周波数帯の拡張については、本年度中に結論を得るとしています。

② 東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えた訪日外国人向けSIMカード販売、IoT時代のM2Mサービスなど、多様で廉価なサービスのためのモバイルネットワークの機能の開放などモバイル分野の競争促進・利用環境整備を促しとしています。

③ 無料公衆無線LAN環境の整備は「SAQ2 JAPAN Project」に基づく取組と連携し、外国語対応の強化については「グローバルコミュニケーション計画」に基づく取組と連携して進めるとしています。

改革のモメンタム(momentum)

2020年をモメンタムとして、改革・イノベーションを加速していくことが重要であるとして、具体的に6つのプロジェクトの展開を図るとしています。

① 次世代都市交通システム・自動走行技術の活用

ア)2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会での東京臨海部での次世代都市交通システム(ART:Advanced Rapid Transit)を実現する。

イ)高齢者等の移動制約者に対する移動手段の確保

ウ)トラックの隊列走行の実現を図る。

momentum_001_R(「改革2020」プロジェクト  より)

② 分散型エネルギー資源の活用によるエネルギー・環境課題の解決

ア)再生可能エネルギー由来のCO2フリー水素の利用

イ)革新的エネルギーマネジメントシステムの確立

 

③ 先端ロボット技術によるユニバーサル未来社会の実現

・あらゆる生活空間でロボットが活躍し、高齢者や障害者、外国人も含めた多様な者が、ストレスフリーな生活の実現に必要な幅広いサービスを享受するシーンを作り上げ、実体験の機会を提供する。

 

④ 高品質な日本式医療サービス・技術の国際展開(医療のインバウンド)

・国外からの医療サービス(健診や治療・検診(治療後のフォローを含む。))の受診者を積極的に受け入れる医療機関をリスト化

・渡航受診者による我が国医療の実体験(病気にならないための予防・早期発見、罹患後の治療・リハビリを通じた生活復帰など)の機会を拡大

 

⑤ 観光立国のショーケース化

・観光資源等のポテンシャルを活かして世界に通用する魅力ある観光地域づくりを行う

・観光産業を我が国の基幹産業の一つに押し上げることを目指して、ア)観光地域、イ)東京、ウ)成田空港・羽田空港において、以下の取組を行う。(略)

 

⑥ 対日直接投資拡大に向けた誘致方策

・成長戦略に盛り込まれた施策の推進を通じたビジネス環境等改善の成果を積極的に発信し、投資案件の発掘・誘致活動等に戦略的に取り組んでいく。

・国内における規制・制度改革を加速させることにもつなげていく。

・対日直接投資の拡大に向け、ビジネスカンファレンスの開催など対外発信を行う。

 

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