Digital Dictatorship

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ダボス会議とユヴァル・ノア・ハラリ博士

Dictatorship(ディクテータシップ)とは、専制君主とか独裁者といった意味です。「Digital Dictatorship(デジタル・ディクテータシップ)」は、日本語では「デジタル独裁」「デジタル専制」などと訳されています。

この言葉は、今年(2018年)のダボス会議で注目された言葉の一つです。ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)は1月22日から26日までスイスのダボスで行われましたが、その会議の中にイスラエルの歴史学者で「サピエンス全史」の著者として有名なYuval Noah Harari(ユヴァル・ノア・ハラリ)博士が招待されました。経済会議に歴史学者が招待されるというのは珍しいかもしれません。

ユヴァル・ノア・ハラリ博士は、1月24日に「Will the Future Be Human?(未来は人間的か?)」というタイトルで20分ほどのスピーチを行いましたが、その中「Digital Dictatorship(デジタル独裁)」という言葉が使われました。

ユヴァル・ノア・ハラリ博士のスピーチ

新しい種の誕生

博士は、冒頭、現在の私たちはホモサピエンスの最後の世代になるかもしれないと語り掛け、データを掌握する者が人間のみならず生命そのものの未来を左右すると述べています。

かつて土地が重要な資産であった時は貴族と平民という階級が生まれ、産業革命による資本主義は、資本家と労働者という階級を生みました。現在は土地などの実体とは紐づかないデータが最も重要な資産となってきており、人類はデータの所有と被所有によってこれまでのような階級の分化といよりも、人間そのものが新しい別の種に進化するかもしれないとしています。それが、冒頭のホモサピエンスの最後の世代に結びついているのかもしれません。

人間をハックする

データが重要な資産というときのデータは、個人の買い物履歴だとか行動履歴とかというレベルでのデータではなく、バイオメトリックデータ、つまり体内や脳内などで起きているデータを指しているようです。そして、コンピューターサイエンス(機械学習やAI)の進展と生命科学の進化によって、バイオメトリックデータの解析が可能になり、人間さえも「アルゴリズム」として把握される状況にあると博士は述べています。このアルゴリズムは、「本人よりも本人をよく知るアルゴリズム」です。これによって、人が何を考えているのか、何を欲しているのか、どんな感情を抱いているのかなどといったことが、本人が自覚する以上に深く知ることができるようになるというのです。このことを、人間をハックすると表現しています。

中央処理とデジタル独裁

博士は、このような人間を知るアルゴリズムは、人の感情を操作し意思決定を行うことさえ可能にすると述べ、その行きつく先が「Digital Dictatorship(デジタル独裁)」であるとしています。

また、博士は政治体制を情報処理という観点でとらえ、民主主義は組織や個人による情報の分散処理システムであり、独裁制は情報を一極集中させる中央処理システムであるとしています。そして、20世紀は分散処理がうまく機能したが、21世紀はAIや機械学習の進化への対応を誤ると分散処理より中央処理の方が効率的となり「Digital Dictatorship(デジタル独裁)」体制が敷かれるかもしれないと述べています。

実際に、識者の中には、経歴や個人の行動、嗜好などあらゆる情報の管理が進む中国の状況は、「Digital Dictatorship(デジタル独裁)」体制に向かっていると指摘する声があります。意思決定へのコストや国際競争力という点で民主主義が不利だとすれば、遠からず民主主義は「Digital Dictatorship(デジタル独裁)」に敗北する可能性を指摘する声もあります。

生命の進化は人間が設計?

さらに博士は、スピーチの冒頭で述べたように、生命体情報をハッキングすることでDNAなどの情報を人為的に作り替えようとする人間が出てくる可能性を指摘しています。そうなれば、これまでの自然淘汰という生命の進化が、人間が設計する時代へと変わり、ホモサピエンスにかわる新しい種が誕生するかもしれないというわけです。だからこそ、博士はデータの規制をすべきであると述べていますが、一方で、データはどこにでも存在すると同時にどこにも存在しないという特殊性から、その規制は難しいとも述べています。特に、バイオメトリックデータを誰がどう管理するべきかという問いに対する答えは、人類の未来にも関わる問題であるとしています。

 

(参考資料:World Economic Forum 「Will the Future Be Human? 」 https://www.weforum.org/events/world-economic-forum-annual-meeting-2018/sessions/will-the-future-be-human )

(参考資料:国土交通省スーパー・メガリージョン構想検討会「KAITEKIなスーパー・メガリージョンをめざして」2018年2月1日 格式会社三菱ケミカルホールディングス取締役会長 小林善光 www.mlit.go.jp/common/001220776.pdf )

(参考資料:英語とつきあう「【英日対照で読むAI考】人間の未来はデータが決める(2018年ダボス会議世界経済フォーラムのハラリ氏講演)https://tokoshie-jp.com/2018/02/13/historian-harari-thinks-data-will-determine-the-future/

(参考資料:NHKマイあさラジオ「デジタルエコノミーの時代の見方」(2018年2月26日放送))

 

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