無人の自動運転車

autonomous_vehicles_002_r

カリフォルニアのドライバーなし自動運転

カリフォルニア州の知事が運転手なしの自動運転の試験走行ができる法案に署名したというニュースが先月(2016年9月29日)ありました。カリフォルニア州議会法案1592というものです。とはいっても、どこでも自由に走行できるわけではありません。法案には次のように書かれています。

(1) The testing shall be conducted only at a privately owned business park designated by the authority, inclusive of public roads within the designated business park, and at GoMentum Station located within the boundaries of the former Concord Naval Weapons Station.
(2) The autonomous vehicle shall operate at speeds of less than 35 miles per hour.

当局が指定する私有のビジネスパーク(サンフランシスコの北東のコンコード市にある5千エーカー)、および敷地内の公道と場所が指定されており、時速も35マイル(約55キロ)以下となっています。その他にも自動運転車が収集する個人情報の開示や事故を起こした時の報告、保険などについても定められています。
規制はあるものの運転席に運転手が座らず、ハンドル、ブレーキ、さらにはアクセルも装備していない自律走行車によるテスト走行がカリフォルニア州で可能になるというわけです。

ところで、カリフォルニア州の車両管理局が2015年12月に自動運転車の走行にドライバーの乗車を義務付ける法案(上院法案1298)を発表し、Googleは「非常に落胆した」とコメントをしていましたが、この法案はどうなったのでしょうか?

アメリカでは、カリフォルニア州の他に自動運転車を路上でテストするための法を整備した州や地域は、ネバダ、フロリダ、ミシガン、ハワイ、ワシントン、ワシントンDC、およびテネシーがあります。

ミシガン州では次のようになっており、無人での走行は認められていません。

①ミシガン州認定の専用ナンバープレート(Mプレート)を装着すること。
②ミシガン州が認めた保険に加入すること。
③自動車メーカーの従業員(もしくはこれに準ずる自動車メーカーとの契約者)等により運行されるこ と。
④車両の走行について監視し、必要に応じて、運転操作ができる人が乗車すること

ネバダ州ではダイムラーが高速道路での走行許可を受けているそうですが、緊急時にはハンドル操作を行うことが義務づけられているため、運転席には必ずドライバーが座って、常時システムを監視する必要があるとのことです。

イギリスでは2015年に「Driverless Cars」プロジェクトをまとめていますが、「当分の間、テストドライバーが乗車し、必要なときにオーバーライドできる状態で実証実験を行う」としています。

日本での無人運転

日本においては、公道での自動運転について、警察庁が2016年5月に「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」を発表しています。ガイドラインでは、次のように記されており、運転手なしの自動走行の実証実験は認められていません。

現行法上、次の条件を満たせば、公道実証実験を行うことは可能である。

○ 公道実証実験に用いる車両が道路運送車両の保安基準の規定に適合していること
運転者となる者が実験車両の運転者席に乗車して、常に周囲の道路交通状況や車両の状態を監視(モニター)し、緊急時等には、他人に危害を及ぼさないよう安全を確保するために必要な操作を行うこと
○ 道路交通法を始めとする関係法令を遵守して走行すること

(自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン 警察庁)

警察庁では、2016年6月に「自動運転の段階的実現に向けた調査検討委員会」を設けて、その中で、「遠隔型自動走行システムによる無人自動走行移動サービス」について議論していくようです。遠隔型となっており、完全な自動運転とはいえませんが、ドライバーが乗車していないという点ではかなりの前進かも知れません。スケジュールでは2017年3月に報告書が出されるようです。

無人の自動走行において、法整備が必要だということがよく言われますが、日本の道路交通法に第70条には「車両等の運転者は当該車両等のハンドルブレキその他の装置を確実に操作しかつ道路交通及び当該車両等の状況に応じ他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」とあり、この「運転手」の解釈が難しいのかもしれません。また、日本をはじめ世界の多くの国が加盟しているジュネーブ道路交通条約には、

第8.1条:一単位として運行されている車両又は連結車両には、それぞれ運転者がいなければならない
第8.5条:運転者は、常に、車両を適正に操縦し、・・・・。
第10条:車両の運転者は常に車両の速度を制御していなければならず、・・・

とあります。欧州の諸国では、ジュネーブ条約の他にウィーン道路交通条約にも加盟しています。そこには次のように決められています。

第81条:あらゆる走行中の車両か連結車両には、運転者がいなければならない
第85条:あらゆる運転者は、常に、車両を制御するか
第13.1条:車両のあらゆる運転者は、いかなる状況においても、当然かつ適切な注意をし て運転者に必要であるすべての操作を実行する立場にいつもいることができるよう車両を制御下におかなければならない

こうしたことから、無人運転車を走らせるにはこれらの国際条約の改正が必要だといわれています。
前述の警察庁の検討委員会では、遠隔型自動走行システムによる無人自動走行について議論をするということでしたが、これはジュネーブ条約などの改正を待たずに自動動向を行う抜け道のようなものかもしれません。

条約には、車両を操縦したり速度を制御したりする運転手が車に乗っていなければならないとは書いてありません。ですので車に乗っていなくても、遠隔で操作してもよいではないかという考えもあるようです。

実際に、2016年3月に行われた国際連合欧州経済委員会(UNECE)道路交通安全作業部会(WP1)では、「自動運転車両の実験について、車両のコントロールが可能な能力を有し、それが可能な状態にある者がいれば、その者が車両内にいるかどうかを問わず、現行条約の下で実験が可能」という競技の結果が報告されています。日本はこのWP-1の72回の会合から正式メンバー になっています。

autonomous_vehicles_001_r(自動運転をめぐる最近の動向と警察庁の取組について 平成28年6月警察庁交通局 https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/jidounten/kentoiinkai/01/shiryou1.pdf より)

上記の表では、中国がどの条約にも加盟していません。そこで、各国に先駆けて中国が条約に縛られないで大胆な無人の自動走行を始めるのではないかと予想する向きもあるようです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です