宇宙ビジネス

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民間企業の宇宙ビジネス

先日、「インターステラテクノロジズ」が自社開発した小型ロケット「MOMO(モモ)」を2017年7月29日に打ち上げるとの発表がありました。燃料にエタノールを使用するなどしてコストダウンを図り、通常の10分の1の費用での打ち上げを目指しているとのことです。
日本はまだ宇宙ビジネスの黎明期のように感じますが、アメリカなどでは、民間企業による宇宙ビジネスが盛んになってきています。航空宇宙防衛産業に特化したアメリカのコンサルティング会社「THE TAURI GROUP」が発表している「Start-Up Space」によれば、下図のように2000年から2015年までに80社以上の宇宙ベンチャーが起業しています。

space_business_001_R(Start-Up Space Rising Investment in Commercial Space Ventures January 2016 THE TAURI GROUP https://brycetech.com/downloads/Start_Up_Space.pdf より)

内閣府宇宙政策委員会 宇宙産業振興小委員会の資料によれば、2015年の世界の宇宙産業市場は2,083億ドル(約22兆円)で年成長率は3%、ジェトロ海外調査部米州課の資料では、市場規模は約3,229億ドルとしています。我が国の宇宙産業の市場規模は約1.2兆円で、その内訳は宇宙機器産業が3,500億円、宇宙利用産業が約8,000億円となっています。2015年に決定された宇宙基本計画では、我が国の宇宙機器産業の事業規模として10年間で官民合わせて累計5兆円を目標にしています。また、内閣府から2017年5月にだされた「宇宙産業ビジョン2030」では、2030年代の早期に、現在の約2倍に当たる2・3兆~2・5兆円にすることを目標にしています。

S-BOOSTER2017

こうしたことから、内閣府、宇宙航空研究開発機構(JAXA)及び民間企業(ANAホールディングス、三井物産、大林組、スカパーJSAT)では、宇宙を利用した様々なビジネスアイディアを募り、新たなビジネスモデルを発掘しようという「S-BOOSTER2017」を行っています。

S-Boosterの「S」には、宇宙のSpaceと起業のStartup、そして成功のSuccessのそれぞれの「S」と内閣府宇宙開発戦略推進事務局が2016年に立ち上げたS-NET(スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク)の「S」の合わせて4つの意味が込められています。Boosterは「後押しする人・後援者」という意味がありますが、アイディアをアイディアで終わらせないで、市場に乗せるまでサポートしようという狙いからつけられたようです。

アイディアの募集は7月18日までです。最終審査は10月30日に東京都港区の六本木ニコファーレで行われ、大賞(1件)は300万円、スポンサー賞(4件)は100万円、審査員特別賞(最大3件程度)は10万円となっており、さらにスポンサー企業から事業化支援を受けられる可能性もあります。

応募要項によれば、募集テーマは、各種人工衛星(通信・地球観測・測位等)、有人宇宙活動、宇宙輸送などの宇宙技術やそこで取得した衛星データ、運用ノウハウ等を利用したビジネスアイディアで、既に実証されているものに限らず、将来実現すべき技術でも構わないとなっています。

審査のポイントは、「実現性(事業化が可能か)」「収益性(将来的に収益が見込めるか)」「革新性(新しい発想、新しい製品・サービスか)」「発展性(社会全体への波及効果が期待できるか)」といった5つの観点で審査されるようです。

宇宙ビジネスの分類

宇宙ビジネスといっても様々なジャンルがあります。ロケットの製造、打ち上げ、衛星の製造、宇宙旅行といった観光、通信、気象、資源探査、宇宙服や宇宙食なども含めれば、その範囲は多岐にわたります。

そこで、便宜的に宇宙ビジネスを分類すると、衛星やロケットの製造などの「宇宙機器産業」と、人工衛星を利用した通信放送やGPS、リモート・センシングなど「宇宙利用産業」に大別する場合があります。また、この2つに「宇宙関連 民生機器産業(通信放送やGPSなどのサービスに必要となるユーザ端末等の機器製造業)」と「ユーザー産業群(宇宙利用産業や民生機器産業を利用した事業の展開する又は提供する産業)を加えて4つに分類する社団法人日本航空宇宙工業会による定義もあります。

内閣府宇宙開発戦略推進事務局の「宇宙産業の現状と動向について(平成28年6月)」では、宇宙産業市場規模を「打ち上げ産業」「衛星製造産業」「地上設備」「衛星サービス」の4つに分類しています。アメリカ衛星産業協会(Satellite Industry Association :SIA)も同じように「衛星サービス(satellite services)」「衛星製造(satellite manufacturing)」「衛星打上げサービス(satellite launch services)」「衛星地上設備(satellite ground equipment)」に分類して、それぞれの業績等を報告しています。

アメリカのコンサルティング会社「THE TAURI GROUP」が2016年9月に発表した「State of the Satellite Industry Report」では、宇宙産業を「衛星産業(Satellite Industry)」と「衛星以外の宇宙事業(Non-Satellite Industry)」に大きく分け、さらに「衛星産業」は「衛星サービス(Satellite Services)」「衛星製造(Satellite Manufacturing)」「ロケット打ち上げ(Launch)」「地上機器(Ground Equipment)」の4つに分けて市場規模を表しています。その4つはさらに細かく分けられているのですが、例えば、衛星サービス(Satellite Services)は、消費者向けサービス(Consumer Services)、固定衛星通信サービス(Fixed Satellite Services)、モバイル衛星通信サービス(Mobile Satellite Services)、地上観測サービス(Earth Observation Services)に分けられています。

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(State of the Satellite Industry Report  THE TAURI GROUP http://www.sia.org/wp-content/uploads/2017/03/SSIR-2016-update.pdf より)

総務省の宇宙×ICTに関する懇談会(第1回)にだされた野村総合研究所の資料では、宇宙ビジネスの業界構造として、「地上系ビジネス」「宇宙空間系ビジネス」「天体系ビジネス」に大別しています。地上系といっても人工衛星の利活用だけでなく、ロケットの製造や打ち上げも含まれています。宇宙空間系は宇宙ステーション関連や宇宙旅行などが含まれます。天体系は憧落成や月、火星などの資源探査などが含まれます。

宇宙産業ビジョン2030

2017年5月に内閣府から「宇宙産業ビジョン2030」が発表されました。これは2016年6月に閣議決定された「日本再興戦略 2016」において「我が国宇宙産業の成長目標、その実現に向けた課題や施策を取りまとめた「宇宙産業ビジ ョン(仮称)」を策定する」とされたことを受けたものです。

同書では、宇宙産業は第4次産業革命を進展させる駆動力となるものであり、宇宙技術の革新とビッグデータ・AI・IoTによるイノベーションの結合によって従来とは異なった宇宙利用サービスが創造されるとしています。そして、「宇宙利用産業」「宇宙機器産業」「海外展開」「新たな宇宙ビジネスを見据えた環境整備」といった構成で課題や対応策が示されています。

「宇宙利用産業」では、衛星データの利活用促進に向けた環境整備や政府衛星データのオープン&フリーの推進、モデル実証事業の推進が掲げられています。

「宇宙機器産業」では、国際競争力の確保として「継続的な衛星開発(シリーズ化)」「新型基幹ロケットの開発・推進」「部品・コンポーネント技術戦略の推進」「調達制度の改善・技術開発支援の強化」、新規参入者への支援として「宇宙起動実証機会の充実」「小型ロケット打ち上げのための射場整備」などが挙げられています。

「新たな宇宙ビジネスを見据えた環境整備」では、海外では1000社以上の宇宙ベンチャーがひしめいているが、我が国においては、宇宙ベンチャーのクオリティが高いものの、欧米に比べると圧倒的に層が薄いとしています。ちなみに、現在日本の宇宙ベンチャーは20社ほどといわれています。そしてその要因として、リスクマネーや人材、市場が成長するまでの当面の顧客、技術等の不足としています。その上で、リスクマネー供給の強化やアイデアコンテストの実施及び事業化支援などを挙げています。このアイデアコンテスト及び事業化支援が前述の「(S-Boosterの創設)になります。

 

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